はじめに
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、14年間にわたって長期保有した中国のEV最大手BYD(比亜迪)株を、立て続けに2回売却したことが報道されていますね。
先月下旬と今月2日に香港証券取引所にファイリングされた文書によると、バークシャーは2006年に取得したBYD株2億2500万株のうち、1.4%に相当する合計305万株を14年ぶりに売却しました。これによって、バークシャーのBYD持ち分は19.02%から18.87%に低下しています。
バフェット氏のバークシャー、中国BYD株を追加売却-約80億円相当
Bloomberg, 2022-09-02
上の表は、SECのEDGARや、日本の金融庁のEDINETに相当する、香港証取の企業開示情報です。
なお、BYD株は、バークシャーハサウェイの子会社のバークシャーハサウェイ・エナジーを通して間接所有されています。
下は、2021年年初からの、BYD(赤色)の推移を、テスラ(青色)と相対比較したものです。
(クリックで拡大できます。)
今年2022年の7月に、バークシャーが保有するBYDとほぼ同規模の株式売却が香港取引所のシステムに現れ、バフェット氏がすべてのBYD株を売却する準備をしているのでは、との憶測が飛び交いました。
BYD株は、上のチャート通り、その7月から下落基調を辿っています。
市場では、バフェット氏が14年間保有したBYD株をなぜ売却しているのか、またBYD株の売却をいつ止めるのか、に注目しています。
バフェット氏は、14年間保有したBYD株をなぜ売却しているのか?
バフェット氏が14年もの間保有したBYD株を、なぜ今売却しているのかについては、バークシャーは特にコメントを出していません。
したがって、各メディアはその理由について推測の記事を出しています。
バロンズでは、単純な理由として、
- 長期保有の間に割高な水準まで株価が上昇して、十分利が乗ったから売却しているのでは
とみています。バークシャーが2008年に取得したBYD株は、その後年平均約24%の好リターンを上げてきています。またBYD株の現在の予想PERは、約 41倍であるのに対して、2008 年頃の予想PERは10 倍~15 倍でした。
(参考記事:バロンズ)
一方GuruFocusは、さらに詳しく以下のように分析しています。
- そもそもBYDの取得は、バフェット氏によるものではなく、彼の右腕であるチャーリー・マンガー氏がBYD創設者の意欲と技術に非常に感銘を受けたことによるもので、現在は経済環境が大きく変わり、多くの競合他社の参入によってEV産業がコモディティ化する懸念が増大しており、また中国市場全体の不確実性が増加していること
- BYD株を直接保有しているバークシャー子会社のバークシャーハサウェイ・エナジーは、再生可能エネルギー分野のインフラ投資に今後数年間で数百億ドルを費やす見込みであること
- バフェット氏は世界の他の地域と比較して米国経済の回復力により大きい信頼を置いており、米国での投資により多くの資金を集中させたいこと
としています。(参考記事:GuruFocus)
バフェット氏と同じ銘柄を保有している投資家は普段は心強いですが、逆にバフェット氏がその銘柄を売却すると、一転して下落リスクにさらされますね。
BYDのように長期保有していた銘柄はなおさらです。
以上ご参考になれば幸いです。