東京オリンピックがスタート
東京オリンピックが始まりましたね。関係者の辞任などいろいろありましたが、始まった後はアスリートの応援に集中したいものですね。
この記事を書いている間も、新種目のスケートボードで堀米選手が金メダルをとりました!
異例の開会式などについて海外メディアもいろいろな報道をしていますが、中でも米NBCは、アスリートの感動的なパフォーマンスをポジティブに流す通常のスタイルを通しています。
今回は、IOCの最重要顧客(収入源)である、NBC(NBCユニバーサル・コムキャスト)についてまとめておきたいと思います。
NBCとは?
NBC(ナショナル・ブロードキャスティング・カンパニー)は米国3大テレビネットワークの一つのテレビ局で、1926年設立、ニューヨーク・ロックフェラーセンターに本社を置き、米国で初めてテレビ放送を始めた歴史の長い会社です。(3大テレビネットワークの残り2つは、ディズニー傘下のABCと、ViacomCBS傘下のCBSです。)
1900年代のNBCは、主にゼネラルエレクトリック(GE)が支配していましたが、2000年代に入り、2003年にフランスのメディア企業VivendiとGEによるM&Aによって(NBCを保有する)NBCユニバーサルが設立され、2011年にコムキャストがNBCユニバーサルの株式を一部取得、2013年にコムキャストはGEの残りのNBCユニバーサル株式を全て取得しました。これ以降、NBC・NBCユニバーサルは、コムキャストによって完全支配されています。
NBCユニバーサル(コムキャスト)はなぜ五輪に強い影響力を持っているのか?
2011年に、コムキャストは2014年から2020年までの夏季2回と冬季2回の合計4回のオリンピックの放映権についてFox SportsとESPNに競り勝ち、IOCに43.8億ドル(各オリンピックにつき約11億ドル)を支払いました。 さらに、2014年、NBCユニバーサルはIOCとの放映権契約を延長し、2022年から2032年までの夏季3回と冬季3回の合計6回の放映権を77億5000万ドル(各オリンピックごとに12億7500万ドル)で確保しています。
- 2014年:ソチ(冬季)
- 2016年:リオ(夏季)
- 2018年:平昌(冬季)
- 2021年:東京(夏季)
- 2022年:北京(冬季)
- 2024年:パリ(夏季)
- 2026年:ミラノ(冬季)
- 2028年:ロサンゼルス(夏季)
- 2030年:未定
- 2032年:ブリスベン(夏季)(※今月決定したばかり。候補都市はブリスベンだけでした。)
IOCの全収入のうち、約7割は放映権収入で占められており、米国の放映権を独占するNBCユニバーサル(コムキャスト)は、IOCにとって最重要の顧客となっています。
コムキャストは、2016年のリオ・オリンピックでは、収益(メインは広告料収入)が16億2000万ドル、純利益は約2億5000万ドル(利益率:15.4%)と報告しています(データ元)
コムキャストのオリンピックへの事業投資の中で、カギとなるのが、2020年にスタートした「Peacock(ピーコック)」という動画ストリーミングサービスです。
「ストリーミング・ウォー」と形容されるほど、動画配信サービスの競争は激化しており、ネットフリックス、ウォルトディズニーのDisney+、ワーナーメディアのHBO Max(2021年5月にAT&Tはワーナー事業を分離、ディスカバリー社と新会社を設立すると発表しています)、Apple TV+、ヴァイアコムCBSのParamount+、などの中で、コムキャストとしては、オリンピックによって、後発のピーコックの加入者増につなげたいところです。
NBCグループ内のいろいろなチャンネルや、ピーコックの無料・有料の配信でオリンピックを観ることができます。中でもピーコックではストリーミングの強みとして毎日のライブショー、リプレイ、厳選ハイライト集、オリジナルコンテンツなどを配信していますが、最重要コンテンツの男子バスケットボールの視聴には有料のサブスクリプションが必要です。
コムキャストはわかりにくい会社ですが、直近の時価総額はS&P500構成銘柄の中で第22位、通信・メディアエンターテイメントをカバーする巨大なコングロマリットです。ケーブルテレビ事業(ブランド名:Xfinity)は圧倒的シェアの米国最大手ですが、同事業の将来の成長鈍化を見越して、上述のNBCユニバーサルの取得などのメディア事業を10年以上前から展開しています。大阪のUSJも同社の傘下です。