ツイッターの取締役の出資比率合計は3%未満
イーロン・マスク氏の買収提案に対して、ツイッターの取締役会は2022年4月16日、「ポイズンピル(既存株主に新株予約権を割り当てて、買収者の株式保有比率を引き下げる買収防衛策)」の導入を決めたことを発表しましたね。市場では、マスク氏が株式公開買い付け(TOB)に踏み切る可能性が指摘されています。
最近の一連のツイッターとマスク氏の応酬のなかで、ポイントになっていることの一つは、「ツイッターの取締役会の持株比率がとても少ない」ということですね。
下は、投資ファンド経営者Gary Black氏とマスク氏の、2022年4月18日のツイートです。
- 投資ファンド経営者Gary Black氏が、ツイッターの取締役会11名の出資比率は合計しても3%未満である一方、2021年度に総額約290万ドルの役員報酬(現金とストックオプションの合計)を受け取っていることについて、「a nice part-time job」(割のいいバイトだ)とツイート。
- これに対して、マスク氏は「私の買収案が実現した場合、取締役の報酬をゼロにするので、直ちに年間300万ドルを節約できる」とツイートしています。
取締役の持株比率が少ない会社の株価が伸び悩んでいる場合、取締役報酬については、取締役と株主の経済的利益は一致していない、といえますね。
ちなみに、ツイッターとテスラの取締役会の持株比率(普通株とストックオプションの合計)を比較すると以下のようになります。
- ツイッターの取締役の持株比率
- ジャック・ドーシー氏(2022年の株主総会で取締役を辞任予定)が2.363%
- 他10名を合わせた取締役の持株比率合計は、2.6%
- テスラの取締役の持株比率
- イーロン・マスク氏 23.548%
- 他10名を合わせた取締役の持株比率合計は、25.3%
そもそも、ツイッターの取締役の持株比率はなぜ少ないのでしょうか?
ツイッターの取締役の持株比率はなぜ少ないのか?
そもそも、ツイッターの取締役の持株比率はなぜ少ないのかというと、
答えは単純で、「ツイッターは、一人の純然たる創設者がいない会社だから。」と考えられます。
ツイッターの創設者は、ジャック・ドーシー氏含めて個性の全く異なる4名の開発者で、内部のいざこざを経て現在の体制になっており(しかもドーシー氏は近く辞任予定)、純然たる一人の創設者の思想の下で一枚岩になっている会社ではありません。
下の参考記事がとても詳しいのでご紹介します。
参考記事:Twitterの歴史と思想、4人の創業者たちのドラマ~Twitterはどこから来て、どこへ向かうのか~
これはツイッターに限ったことではありません。
オーナー系の会社の場合、通常は一人の純然たる創設者(やその一族)が株式の大部分を保有し、続いて共同創設者や創業当初からの長期投資家が次に大きな持株比率を保有し、新規の取締役は大きな持株比率を保有しません。したがって、現在の取締役会に純然たる創設者やその一族がいない会社は、結果的に取締役会の持株比率が非常に少なくなることがあります。たとえば、(創設者が既に去っている)ペイパルの取締役全員の持株比率は、0.1%未満です。(参考記事:バロンズ)
「持株比率がとても少ない取締役が、リスクを負ってでも、株主のために経営努力するのか?」という意見は正当であると思いますが、実際のところ、多くのテック企業やその他のセクターの企業は、ツイッターと同じような持株比率になっています。
日本の多くの(非オーナー系)上場企業も同じですよね。(日本の上場企業の取締役は、「割のいいバイト」になっていないでしょうか?)
ご参考になれば幸いです。