米国の長期金利は、大幅利上げをかなり織り込んでいる
先週金曜の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を上回るなど強い内容で、FRBの利上げ鈍化観測が後退しました。結果、米長期金利が上昇、米国株は反落、ドル買い戻しの動きでしたね。
今週は金曜(6月10日)に米CPIが発表されます。
さて以下は、ときどき掲載している「米国株の環境認識チャート(米国株.com式)」です。このチャートは、S&P500指数、米国の長期金利(10年・20年・30年)、CPI、FFレートを一覧にしたものです。
先週の雇用統計は強かったものの、下のチャートを見るとやはり、FRBの金融引き締めは加速するものの、米国の長期金利は大幅利上げをかなり織り込んだ水準であるという見方がしっくりきます。
ということで、米国の長期金利はこれからしばらく、もみ合いになるかなと思います。
米国株相場にとっては、少し良い材料でしょうか。
長期金利の最注目は、米国から欧州へ移行か?
上述のように、米国の長期金利は大幅利上げをかなり織り込み済みという動きであるのに対して、足元で顕著な動きを見せているのは、米国よりも欧州の長期金利です。
以下のチャートは、各国の10年債利回りの今年2022年の年初からの推移を比較したものです。足元では、矢印を入れたドイツやイタリアなど、欧州の長期金利が急上昇しています。
(クリックで拡大できます。上から順に、ニュージーランド・豪州・イタリア・カナダ・米国・ノルウェー・英国・スウェーデン・ドイツ・スイス・日本となっています。)
欧州の長期金利の足元の上昇は、「エネルギー価格の上昇に伴うインフレ圧力によって、ECBが金融政策の正常化を進める(7月に利上げ開始か)」とみられているためですね。
ECBの利上げ期待が高まる中で、通貨ユーロは1年以上続いた下落から反発の兆しがあります。
ただし、EUのロシアに対する石油禁輸措置が欧州経済の成長を損なう、という見方があります。金利と経済の不透明感は、米国よりも欧州でより強くなるのではないか、と考えられます。
見方を変えれば、ウクライナ戦争が収束すれば、欧州株や通貨ユーロには強い追い風ですね。
ご参考に下は、上であげた各国の10年債利回りを長期で比較したものです。
(クリックで拡大できます。)
金利をおさえることは、投資の基本といわれますね。
米国株だけでなく、各国の長期金利の動きを常にウォッチしていきましょう。
ご参考になれば幸いです。