(1)金と相関関係が高いものは?
(2)金投資に役立つおすすめ情報源リスト
(3)金の長期投資:金ETFはどれを買うべきか?(GLD, IAU, GLDM)
(4)金の短期トレード:金の値動きの特徴は?
はじめに
今回からコモディティの中の最重要アイテムとして、金(ゴールド)を特集してみたいと思います。
著名ファンドマネージャーの江守哲氏は、メルマガの中で以下のようにコメントされています。
私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨している。株式を購入するときに同時に金を買う。個人投資家にはシンプルでよいだろう。株式4割から5割、金(またはコモディティ)を3割から4割、現金を3割から2割としておけば、何があっても対処できる。ただし、これはあくまで長期的な投資の視点である。トレード戦略とは別勘定で行いたい。トレード戦略用の資金は別に用意したい。
米国株投資を続ける上で、他の投資対象として特に「金」については十分におさえておいた方が良いですね。
江守さんのメルマガはこちらです↓
金と相関関係が高いものは?
下のチャートは、上半分が「ドル建て金CFDの日足チャート(2019年以降の約2年半)」で、下半分は「金と以下の各アイテムとの『相関係数』を示したもの」です。
- 青:TIP(iシェアーズ米国物価連動国債ETF)
- 黒:ドルインデックス
- 赤:ダウ30株価指数
- オレンジ:S&P500株価指数
- 緑:ナスダック100株価指数
- 紫:米10年国債
相関関係は、二つの値の関わり合いのことで、一方が変化すれば他方も変化する関係をいいます。相関関係には「正の相関」と「負の相関」があります。正の相関関係とは、一方が増加すると他方も増加するという関係で、負の相関関係は一方が増加すると他方が減少するという関係です。
相関関係の程度を示す指標として、「相関係数(correlation coefficient)」というものがあります。相関係数とは、2 つの値の間の相関の度合い(類似性の度合い)を示す統計学的指標で、−1 から 1 の間の値をとり、1 に近ければ近いほど2 つの値には正の相関が強く、−1 に近ければ近いほど負の相関が強いことを意味します。
上のチャートの相関係数の部分は、中央の水平線が相関係数ゼロを意味しており、水平線より上は正の相関、水平線より下は負の相関を意味しています。
金との相関関係:金利(特に実質金利)
金の価格の決定要因として最も重要性が高いものの一つとして、「金利」が挙げられます。
金利が高い場合は、債券などの金融商品において高いリターンが見込めます。金は、銅などのような工業的用途が限定的であるため、景気上昇を背景とする価格上昇の可能性は比較的低いといえます。つまりこの場合、金利を生まない金に資金を寝かせておく魅力は減少することになります。
一方金利が低い場合は、上記と逆の状況になって、相対的に金の魅力が増加することになります。
金価格と関連性の高い金利として参照されることが多いのが、米国債の中の特に「TIPS(Treasury Inflation Protected Securities、米国物価連動国債)」です。
物価連動債は、物価上昇率(インフレ率)に応じて、元本が調整される債券で、表面利率は固定であるものの、物価上昇に連動して元本が増加、利払い額や償還額が増加します。言い換えると、物価連動債はインフレがおきても実質的な価値が低下しない債券といえます。
物価連動国債の利回りを「実質金利」と呼び、実質金利と長期金利(長期固定利付国債利回り)の間には理論的に「期待インフレ率 ≒ 長期金利-実質金利」という関係が成立します。実質金利は物価連動国債の市場価格から計算できるので、同年限の長期金利と対比することにより、期待インフレ率を逆算して推計することが可能です。なお、10年固定利付債の利回りから10年物価連動債の利回り(実質金利)を差し引いた値を、「ブレークイーブンインフレ率(Break Even Inflation rate:BEI)」と呼び、市場が予想する期待インフレ率を意味しています。米国のブレークイーブンインフレ率は、セントルイス連銀のサイトで確認することができます。
上のチャートの中で、金(ゴールド)と最も相関が高いものは「TIP(iシェアーズ米国物価連動国債ETF)」です(青いラインに注目してください)。TIPは、TIPS(米国物価連動国債)に連動するETFです。TIPは一般にあまり有名ではないですが、流動性の大きい代表的な債券ETFの一つです。
金との相関関係:米ドル
金利に加えて、金との相関関係が注目されるのが、通貨米ドルです。金は基本的には米ドル建てで価格が決定されているため、金と米ドルは、互いに逆の値動きをする逆相関関係にある、という定説があります。
理論的には正しそうですが、実際の金相場はそれほど単純ではありません。上のチャートの中で、金とドルインデックス(黒いラインに注目して下さい)は、逆相関の期間が多いとはいえそうですが、正の相関になっている期間も結構あることがわかります。
金との相関関係:リスクオン・リスクオフ
金利と米ドルの他に、特に短期トレードでは、最も相関が高いといえそうなのは、相場のリスク許与度のセンチメント(リスクオン・リスクオフ)です。
金は、「有事の金」といわれるように、マーケットがリスクオフの状況になったときには、安全資産である金に資金が流入し(金価格の上昇)、リスクオンの状況になったときには他の商品での運用のために資金が金から流出する(金価格の下落)という現象を見ることができます。
(補足)TradingViewで相関係数を分析するには?
TradingViewにデフォルトで入っている相関係数のインジケータは、「1:1」の相関関係しか表示できません。
「1:n」の相関関係(複数対象の比較)を分析するために、以下のPineScripitを自作しています。
ご参考になれば幸いです。
//@version=4 study( "Correlation Analysis" ) length1 = input( 40 ) plot( correlation(security("US30" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.red,title = "US30" ) plot( correlation(security("US100" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.green,title = "NASDAQ100" ) plot( correlation(security("US500" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.orange,title = "S&P500" ) plot( correlation(security("US10" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.purple,title = "US10Y Bond" ) plot( correlation(security("TIP" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.blue,title = "TIP" ) plot( correlation(security("DXY" ,"D" ,close),close ,length1 ),linewidth = 2, color=color.black,title = "DXY" ) hline(0, linewidth = 1, linestyle=hline.style_solid) hline(0.5, linewidth = 1, linestyle=hline.style_dotted) hline(1, linewidth = 1, linestyle=hline.style_solid)