LiDAR(ライダー)とは?
自動運転関連銘柄の一角として、「LiDAR」と呼ばれる技術の関連企業が、SPAC(特別買収目的会社)を介して米国上場する事例が相次いでいますので、ここでLiDARについてまとめておきたいと思います。
LiDARとは、「Laser Imaging Detection and Ranging」の略で、光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定して、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析する技術です。レーザー光の測定結果の1つひとつが集められて、「点描」の要領でリアルタイムに対象物までの距離や位置、形状などを把握することができます。
LiDARは従来から、地質、気象、地震、航空宇宙、エネルギーなど公的分野を中心に利用されていましたが、最近は民間分野での利用が広がっています。
昨年、アップルのiPhone12の上位機種(Pro/Max)に搭載されましたね。
足元で、LiDARが特に注目されている分野が「自動運転」です。LiDARのセンサーは、自動運転レベル2~レベル3の車両では少ない数のセンサーで対応できますが、それ以上のレベルでは多くのセンサーが必要となります。
自動運転では、レベル1からレベル5まで、5つのレベルが定義されています(レベル0は自動運転なしです)。レベル1は「運転支援」、レベル2は「部分運転自動化」、レベル3は「条件付き運転自動化」、レベル4は「高度運転自動化」、レベル5は「完全自動化」です。主体が人間から車に移るのは、レベル3です。
(画像データ元:Innoviz TechnologiesのWebサイト)
LiDARの市場規模は、自動運転の市場を中心にして、今後の急拡大が見込まれています。
矢野経済研究所によると、LiDARを含むレーザーの市場規模は、2017年の約25億円から2030年には約4,959億円まで200倍に拡大すると予測されています。また、調査会社の仏ヨール・デベロップメント社が2019年に発表した調査結果によると、LiDARの市場規模は2024年に60億ドル(約6,600億円)まで拡大し、このうち70%を自動車関連が占めると予測されています。(データ出所:下記の参考資料2)
LiDAR関連銘柄
それでは、LiDAR関連企業で米国上場している銘柄を、以下に紹介していきます。
まず下のチャートでは、各銘柄の株価を2020年年初から相対比較しています。(2021年7月2日時点)
足元は、年初からのグロース株の下落・SPAC市場の低迷で、LiDAR関連銘柄は調整が続いていますね。
LAZR:Luminar Technologies
フロリダ州オーランドに本社を置くLuminar Technologiesは、2012年設立、2020年12月にSPACを介してナスダックに上場したばかりの会社です。LiDAR関連銘柄の中で、現時点で時価総額の最も大きい銘柄が、このLuminar Technologiesです。なお上のチャート通り、上場直後の昨年12月に急騰した後は、株価は調整局面が続いています。
同社はトヨタと共同開発体制にあるほか、ボルボと提携、ダイムラーのトラック部門が同社への投資を発表、インテル傘下のイスラエル企業・Mobileyeと自動運転車用LiDARのサプライヤー契約を締結、2021年3月に中国上海汽車集団と戦略的パートナーシップを発表、またテスラが同社とLiDARに関する試験に関する契約を締結と報道されています。
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VLDR:Velodyne Lidar
カリフォルニア州サンノゼに本社を置くVelodyneは、LiDAR界のリーディングカンパニーと呼ばれています。
Velodyneは、Velodyne Acousticsというオーディオ会社として1983年にを設立、2016年に、Lidar部門がVelodyne Lidar Incとして、Velodyne Acousticsからスピンオフされました。同年2016年、同社はフォードとバイドゥから1億5,000万ドルの投資を受けています。2020年7月時点で、同社はボルボ、ダイムラー、フォードをはじめ300を超える顧客と取引しています。なお2019年にニコンが受託生産契約を締結しています。
なお同社株は、上のチャート通り、昨年の9月に高値を付けた後、調整局面が続いています。
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OUST:Ouster
カリフォルニアに本社を置くOusterは、2015年に設立、2021年3月にNYSEに上場したばかりです。米航空宇宙局(NASA)、マサチューセッツ工科大学(MIT)などを含む約800のクライアントと取引があります。
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AEVA:AEVA Technologies
カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置くAEVA Technologiesは、元アップル社で自動運転プロジェクト「タイタン」に関わっていたエンジニア2人が2017年に創業したスタートアップで、SPACを介して今年2021年にNYSEに上場したばかりです。同社は世界発となる4D-LiDAR開発を進めています。
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INVZ:Innoviz Technologies
イスラエルに本社を置くInnoviz Technologiesは、2016年に設立、SPACを介して今年2021年4月にナスダックに上場したばかりです。同社は、Magna International(MGA)等の複数の大手自動車サプライヤーと取引しているほか、独BMWが2021年に生産予定の第1世代自動運転車に採用することが発表されています。
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上場準備中:AEye(CFAC:CF Finance Acquisition Corp III)
カリフォルニア州ダブリンを拠点とするAEyeは、2013年に創業、SPACのCF Finance Acquisition Corp(CFAC)との合併を介して上場予定ですが、今年5月に市場環境などを勘案して合併契約を修正したことを発表、上場がペンディングとなっています。
AEye社は、日本のスバルとSBIが共同設立した投資ファンドや、GM、インテルなどが出資しています。
現在自動運転の試験車に搭載されているLiDARはとても高価なもので、そのままでは普及は見込めず、市場拡大のカギはコスト低減・価格の下落が必要と見られています。
長期的に注目していく分野ですね。
なお下のバロンズの記事では、コスト競争力などからInnovizを有望視しています。