USOとは?
足元の市場では、ウクライナ危機の深刻化で原油をはじめとするコモディティ価格が急騰していますね。
原油に関する記事で、ときどき「USO」というティッカーのETF(世界最大の原油ETF)を見かけますね。今回は、このUSOについてまとめておきたいと思います。
覚えやすいティッカーですね。
「USO:United States Oil Fund, LP」は、WTI原油への投資を可能にするために設計された、世界最大の原油ETFです。このETFは、期近のWTI原油の先物を保有することで、同先物の日々の値動きに連動させており、個人では難しい原油に手軽に投資できる機会を提供しています。運用資産残高は、約30億ドル(2022年3月3日時点)で、かなり大きなETFです。
USOの手数料は、0.83%とかなり高いです。その事情は、後ほど説明します。
USOの運用会社USCF(United States Commodity Funds LLC)のWebサイト
USOは、コロナのショック相場で大きな損失を出した
まずUSOと、WTI原油先物のパフォーマンスを比較してみます。
以下のチャートは、2021年年初来からの両者の相対比較です。ローソク足がWTI原油先物で、赤いラインがUSOです。(クリックで拡大できます。)
直近の急騰をふくめ、ほぼ同じパフォーマンスであることがわかりますね。
次に、コロナ前の2020年年初からの両者の相対比較は、以下の通りです。上と同様に、ローソク足がWTI原油先物で、赤いラインがUSOです。(クリックで拡大できます。)
コロナショックを境に、両者は乖離していますね。しかし上側の2021年年初からのチャートでは、同じパフォーマンスです。これはなぜでしょうか?
USOに限らず、先物を原資産とするETFは、先物のロールオーバー(期近物の期限が近づくと、期近物から期先物に限月を乗り換えること)が必要です。期近物より期先物が割高である状態(「コンタンゴ」といいます)では、割安なものを売って割高なものを買うので、コストがかかります。このコストの分、先物を原資産とするETFは手数料が割高であることが多いですが、先物価格との連動自体は維持されるのが普通というか「平常時」です。
一方でUSOで発生したこのケースは、かなり特殊です。
上のチャートでわかる通り、まず2020年の3月頃からコロナのリスク回避が顕在化しはじめ、株式市場と同様に(世界的な原油需要の低下を見越して)原油価格が急落をはじめました。ここで、安くなっていく原油に対して、USOに対しては逆張り的に資金流入が増えていきました。
2020年4月20日に、WTI原油先物の期近(20年5月物)が1バレル=マイナス37.63ドル、史上初のマイナスで引けたことは記憶に新しいと思います(上のチャートの黒い大陰線の日です)。この異様な先物価格(期近物)の下落の犯人自体が、USOとされています。WTI原油先物は期近物の取引が終了すると、現物で受渡しを行う必要があるのですが、物理的な貯蔵施設が無ければ現物で受け渡しを行うことは不可能です。USOの運用会社は、4月20日に「マイナスの価格を負担してでもWTI原油の期近物を売却したい誘因」があったことが、この先物期近物のマイナス引けの原因とされています。
この後、WTI原油先物自体はすぐに回復しています(というか、そもそも期近物だけがマイナスになっただけ)が、USOの方は上記のロールオーバーで大きな損失を出して、一株あたりの価値(NAV)が大きく目張りしたために、(コロナ前を基点にすると)その後のパフォーマンスが原油先物と乖離しています。
この件を経て、「USOが上場廃止されるのではないか」という懸念がありました。実際、ボラティリティの大きい先物を原資産とするETFで上場廃止になった過去のケースとして、VIX指数にインバースで連動する「XIV」などがあげられます。
ただし、USOは複数の限月への分散化を図るなどの対応を行っており、現在でも売買できています。
しかし、ボラティリティの大きい先物を原資産とするETFには、今後も注意が必要ですね。
USOは、日系証券で購入できるか?
結論から言いますと、USOは、日系の大手ネット証券(SBI・マネックス・楽天)では、どこも取り扱いはありません。
ただしサクソバンクでは、USOの現物を取り扱っており、IG証券では、USOのCFDを取り扱っています。
そもそもETFで原油に投資するべきか?(原油はCFDの短期トレードの方が合っている)
これが今回の記事で最も重要なところです。
私の個人的意見ですが、「そもそも原油は、ETFでの投資に合っていない。」と思います。
一方の原油は、長期投資ではなく、むしろ(ボラティリティが大きく流動性も大きいため)短期トレードにあっています。原油の短期トレードとして、個人でも手軽に始められるのが、「原油CFD」のトレードです。CFDは、ETFと違って売りからも入れますし、レバレッジも効かせることができます。
原油CFDのトレードとして圧倒的なおすすめは、「IG証券」です。GMOクリック証券、楽天証券、DMM証券などでも可能ですが、「IG証券」がワンストップで最も取引対象が多く、スプレッドも狭いです。
(補足)USOのオプションの期限に注目
上記の通りUSOは世界最大の原油ETFなので、CBOEに上場しているUSOのオプションが、原油先物価格に影響を与えているといわれています。
USOのオプションの建玉(CBOE)
https://www.cboe.com/delayed_quotes/uso/quote_table
このオプションの3月期限(3月18日)が原油先物相場の変化日とみる向きがありますが、さてどうなるでしょうか。
以上ご参考になれば幸いです。