はじめに
米国の投資雑誌バロンズは、定期的に機関投資家向けのアンケートを実施しており、調査結果を「Big Money Poll」と題して公表しています。そして、今月(2022年10月)初旬に107の機関投資家に対して実施した最新の調査結果が、2022年10月14日に公表されました。
機関投資家の相場見通しやポートフォリオの構成を知ることは、個人投資家にとって大変有用であると思います。ぜひ参考にされると良いと思います。
3~5年の長期スパンでみれば、株式・債券ともに、今がここ数年で最も魅力的な買い場となる可能性がある
上記のバロンズの記事はとても長いので、要約して、ポイントだけを箇条書きでご紹介したいと思います。
- 今後12か月間の株式の見通しについて40%が強気で、30%が弱気。強気派の平均では、S&P500は2023年6月30日までに15%上昇し、2023年末までに22%上昇すると予想。弱気派の平均では、S&P500は2023年半ばまでに8%下落し、その後反発して、最近の水準を4%下回る水準で2023年を終えると予測
- S&P500の予想PERは、2022年年初は約23倍。現在は約15倍にまで低下しており、さらに低下する可能性がある。株式と債券は今年、3四半期連続でそろって下落している(通常、この 2つは互いに逆の動きになる)。来年も市場は不安定で厳しい状況が続くかもしれないが、予想PER10倍~12倍の割安なバリュエーションで優良株を手に入れるチャンスであり、投資対象期間が3~5年の長期投資家にとって現在の環境は「贈り物」である。6か月~1年、投資のタイミングが早すぎたり遅すぎたりするかもしれないが、いずれにしても今後3~5年間でみればリターンは相当なものになる可能性がある
- 回答者の4分の1以上が、金利上昇が来年の最大の投資リスクであると返答、FRBがソフト・ランディング(景気後退を引き起こすことなくインフレを鎮静化)できると予想しているのはわずか14%
- 回答者の平均は、米国のGDPが2022年にほぼ横ばいになり、2023年にわずかに上昇すると予想。CPIは、2023年に3%~5%程度まで緩和すると予想(それでもFRBの2%のインフレ目標のはるか上である)
- 機関投資家は現在、通常よりも多くの現金を保有しており、絶好の投資機会を待っている。回答者の 22%が現在最も魅力的な資産クラスとして現金を挙げており、42%が株式、14%が債券と回答
- 回答者の20%はヘルスケアセクターを好む。このセクターは、ディフェンシブ性とビジネスの安定性があり、金利、インフレ、GDPの動向に関係なく、人々は医療にアクセスする必要がある
- 機関投資家はエネルギーセクターも好む。WTI原油は向こう1年間で89.36 ドルで取引されると予測しており、これを前提にエネルギー企業の売上高と収益が約 26% 増加し続けると予測
- ウォーレン・バフェット氏が「不可避(inevitables)」と呼んでいるようなビジネスを探すことが重要。株価は上下するが、その根底にあるビジネスの価値は適度な速度で進行する。ある機関投資家が例示したのは、アルファベット (GOOGL)、オールド・ドミニオン・フレート ライン (ODFL)、ペイパル・ホールディングス (PYPL)、サーモフィッシャー・サイエンティフィック (TMO)、SVBフィナンシャル グループ (SIVB) など
- 現在の経済サイクルを超えて展開されるいくつかの長期的なトレンドにも投資機会がある。ある機関投資家はクリーン エネルギーの未来をサポートするために老朽化した米国の送電網をアップグレードすることにチャンスがあると考えている。公益事業大手のネクストエラ エナジー (NEE) の試算によると、米国経済を完全に脱炭素化するには、2050 年までに4 兆ドルもの費用がかかる
- ある機関投資家は、電気自動車と再生可能エネルギー源への移行から導電性金属の不足に注目しており、プラグ・パワー(PLUG)、フリーポート・マクモラン(FCX)、サザン・カッパー(SCCO)の株を好んでいる
- ある機関投資家は、割安な評価額で取引され、魅力的な配当利回りの銘柄に注目している。JP モルガン・チェース (JPM:予想PER9倍、配当利回りは3.7%)、ティー・ロウ・プライス・グループ(TROW:PERは13倍、利回4.7%、アッヴィ (ABBV):予想PER12 倍、配当利回り3.9%)など
- 回答者の3分の2近くが、米国が今後12か月で最もパフォーマンスの高い株式市場になると予想しており、13% が新興市場を、11% がヨーロッパを支持。新興国市場はバリュエーションの観点から興味深いものになってきているが、FRBが利上げを一時停止するまでは新興国株は機能しない可能性がある。回答者の半数は、今後1年間でドルが下落すると予想しており、これは米国以外の投資にとって追い風となる
- 回答者の約 86% は、来月の米国下院で共和党が過半数を獲得すると予想。 52%が民主党が上院で過半数を獲得すると予測。半数以上が、議会の分割支配が株式市場にとって最良の結果であると考えている。次の議会が直面する最重要問題はインフレであり、次に移民改革
- 回答者の約39%が米国債を債券セクターで最も好きなカテゴリーと考えており、続いて20%が米国の投資適格社債と回答。彼らはデュレーションを短く保ち、ポートフォリオ全体のほぼ3分の2を債券が占めている。1年物米国財務省証券の利回りは現在4.4% でリスクフリーであり、市場環境は過去15年間の大半の時期と全く異なる。 FRBの利上げサイクルが終わりに近づくにつれて、徐々にデュレーションを延長し始めることが適切であるが、まだそこまで到達していない。回答者の3分の 2 が、現在の目標範囲である3.00% から 3.25% に対して、少なくとも 4.5%がピークになると予測。現在の厳しい市場い環境のなかで、ポジティブな点の1つは、正常化された金利環境では、債券で収入を得ることができるということ。今後10年間を見据えると、今が最大のチャンスの一つになるかもしれない
以上、ご参考になれば幸いです。