イーロン・マスク氏がツイッター株式9.2%を取得
追記1
今回の記事を書いた翌日の2022年4月5日、ツイッターは、イーロン・マスク氏を取締役に起用すると発表しました。任期は2024年の定時株主総会までで、同社とマスク氏は、マスク氏が取締役任期を終えてから90日後まで、ツイッター株の保有比率について14.9%を上回らないことでも合意した、と報道されています。
追記2
2022年4月11日、ツイッターのパラグ・アグラワルCEOは、「マスク氏は同社の取締役会と協議を行ったが、最終的に取締役就任を辞退した。」と明らかにしました。上記追記1の「任期を終えてから90日後までは株式の保有比率について14.9%を上回らない」という合意も意味がなくなったため、マスク氏が今後、ツイッター株を買い増すのではないかという思惑が広がっています。
2022年4月4日、テスラのイーロン・マスクCEOがツイッター(TWTR)の株式9.2%を取得し、筆頭株主になったとみられる、と一斉に報道されていますね。
同氏は、ツイッター株を取得した後の3月下旬、「民主主義が機能するためには言論の自由が不可欠だ」とツイートし、ツイッターがこの原則を厳格に守っていないことについて問題提起しました。
マスク氏と同じく仮想通貨の支持者で、ツイッターの共同創業者であるジャック・ドーシー氏は、業績低迷を受けたアクティビストのエリオット・マネジメントからの退任要求のもと、2021年11月にCEOを退任しています。一方、ドーシー氏の後任として同社CEOに昇格したパラグ・アグラワル氏とマスク氏の関係は微妙で、マスク氏は同年12月、両氏の間の確執をほのめかすミーム画像をツイッターに投稿しています。
マスク氏が純投資目的でツイッター株を取得したとは考えにくいため、今後より積極的に所有権を獲得する可能性があるとする向きがあります。また、SNS業界の再編の呼び水になるとの予想もあります。
4日の報道をうけて、ツイッターの株価は以下の通り、△27%の急騰となっています。
赤がツイッターです。青は参考として、トランプ氏のSNSベンチャー「TruthSocial」と合併する予定のSPAC「Digital World Acquisition Corp.(DWAC)」の株価を表示しています。
(クリックで拡大できます。)
DWACは▼10%の急落で、ツイッターと逆相関の動きになっていますね。
足元のツイッターの業績はどうなっている?
そもそも、足元のツイッターの業績はどうなっているでしょうか?
Meta | Snap | ||
時価総額 | 32.5 | 626.6 | 61.5 |
予想PER | 45.2 | 17.7 | 101.0 |
営業利益率 | 5.3 | 39.6 | -17.0 |
DEレシオ | 75.9 | 11.5 | 69.4 |
(上表のデータ元はYahoo Finance、2022年4月5日時点、)
以下に、重要指標の4半期毎の推移をまとめたおきたいと思います。
ツイッターが最も重視している経営指標であるmDAU(Monetizable Daily Active Usage:収益化が可能なアクティブユーザー)は、以下のような推移になっています。
米国のアクティブユーザーは伸び悩む一方で、米国以外では伸びています。
つづいて、部門別収益の推移、および収益と調整後EBITDAの推移は、以下の通りです。
なお2021年3Qの赤字は、2016年から続いていた集団訴訟が和解したことの関連費用で、一時的なものです。
直近の2021年4Q決算の収益は、増加しているものの市場予想を下回っており、新規ユーザーや広告主囲い込みに向けた取り組みが順調ではない、というのが市場の見立てです。同社は、成長はしているものの、社会的なインパクトが大変大きい割に収益化に苦労している、という状況であると考えます。
そもそもツイッターの経営陣が混乱している要因として、経営陣の持株比率がとても少ないためにアクティビストに狙われやすく、このことがジャック・ドーシー氏の辞任につながった、という見方があります。
このような状況の中で起きた今回のマスク氏のツイッター株大量取得は、今後、マスク氏の経営権取得につながるのか、あるいはSNS業界の再変につながるのか、要注目ですね。