(1)ビットコイン・仮想通貨・ブロックチェーン関連銘柄一覧(随時更新)
(2)テスラのビットコイン投資15億ドルを、年次報告書「10-K」で確認してみよう
(3)スクエアが公表したビットコイン投資の「ホワイトペーパー」に注目してみよう
(4)マイクロストラテジーの貸借対照表で「上場企業のビットコイン投資」を考えてみよう
(5)ブロックチェーン関連のETF「BLOK」全銘柄一覧(随時更新)
(6)ブロックチェーンETF「BLOK」が(ITハイテク株が下げても)好調な理由は、カナダの国策と関係している
(7)ブロックチェーン関連のETFの比較「BLOK」と、「BLCN」「LEGR」の相違点
(8)米国最大の仮想通貨取引所「コインベース」の上場予定日が4月14日に決定。ティッカーは「COIN」
(9)マイクロストラテジー、役員報酬を「ビットコイン払い」に変更
(10)米国最大の仮想通貨取引所コインベース、いよいよ明日(14日)上場
(11)「BLOK」に続くビットコイン関連ETF「DAPP」が米国上場
(12)インバース型のビットコインETFがカナダで上場
(13)世界初のイーサリアムETFがカナダで承認、近日上場へ
マイクロストラテジーはビットコイン関連銘柄の一角
最近、ビットコインとビットコイン関連銘柄の株価が大きく動いていますね。
その中でも、マイクロストラテジー(MSTR)は、ビットコイン関連銘柄の一角として、連日のように社名が相場ニュースに出てきます。
このマイクロストラテジーという会社、とにかく特徴がある会社なので、何回かの記事に分けてまとめていきたいと思います。
今回は、貸借対照表(バランスシート)に焦点をあててみます。
そもそもマイクロストラテジーとは、「BI」(ビジネスインテリジェンス:さまざまなデータを組み合わせてダッシュボードやレポートで可視化する経営管理プラットフォーム)を手掛けるIT関連の会社です。1989年設立で社歴はけっこう長く、年間売上高は約4億ドルくらいです。
下のチャートはローソク足がマイクロストラテジー、青いラインがビットコイン、2020年年初からのパフォーマンスを比較しています。
マイクロストラテジーの株価はビットコインにきわめて連動していますが、直近では同社がビットコインをアウトパフォームしていますね。
※
ビットコインのマイニング(採掘)を本業とする会社は、ビットコイン相場に対してベータ値が1を超える(ビットコイン相場よりより大きく上昇したり、より大きく下落したりする)のは自然であると思いますが、マイクロストラテジーは保有しているだけなので、ビットコインよりアウトパフォームするのはどうかなと思います。
マイクロストラテジーの貸借対照表をみて、上場企業のビットコイン投資を考えてみよう
それでは、マイクロストラテジーの貸借対照表(バランスシート)をみてみます。
下は、2019年12月期および2020年12月期の同社の貸借対照表を比較して図示したものです。
(SECファイリングの年次報告書10-Kを元に当サイトが作成)
ビットコインのマイニング(採掘)を本業とするわけではなく、ソフトウェアを本業とする上場企業としては、驚くべき貸借対照表です。2020年のバランスシートの7割以上をビットコインが占めています。しかも米国の会計基準では、値上がりの評価益が計上されていません。
- 2019年までは、業歴は長いものの、事業の成長性があまり見込めないキャッシュリッチな企業でした。それが2020年に、財務戦略を激変させることになります。
- 同社のマイケル・セイラーCEOは、「(インフレで)減価していくキャッシュを貯めるより、技術革新によるセイフヘイブンの資産でかつ世界初のデジタル金融ネットワークであるビットコインに投資することが、株主にとって良い選択である」と述べており、2020年に大量にビットコインを購入しました。
- 同社は、2020年末時点で7万1470ビットコインを保有、同CEOのツイートによると2020年末時点までに11億2500万ドルをビットコインに投資し、平均取得額は1万5964ドルとみられます。
- 米国会計基準では、ビットコインは「耐用年数の確定しない無形資産」として、値下がりすると減損損失を計上して簿価が下がりますが、値上がりしても期末に評価益は計上しません。現在2021年2月中旬時点で、ビットコインは約48,000ドルですので、上図のオレンジのビットコインの箱(簿価ベースで10.5億ドル)は、時価では34.3億ドル、つまり差額23.8億ドルの含み益が見えていないことになります。
ちなみに日本の企業会計基準では、期末に時価評価して、法人税もかかります(活発な市場が存在する仮想通貨は短期売買目的の金融商品と同様のものとして取り扱います。なお個人の所得税は評価益には課税されません)。したがって米国企業と比べると、ビットコイン投資に相対的にメリットが少ないといえます。ビットコインに関する米国会計基準(無形資産処理)がこのままずっと続くかどうかは、現時点ではわかりません。
- なお、同社はビットコイン購入を目的として、2020年12月に6億5000万ドルの転換社債を発行しました。私募債とはいえ、ビットコインを購入するために社債を発行することは、一般の上場企業にとっては異様な戦略にみえます。
- モルガンスタンレーは、マイクロストラテジーの株式の取得をすすめており、2020年12月時点で79万2627株を保有、持ち株比率は10.9%に及んでいます。
投資銀行が足元でマイクロストラテジーの株式取得をすすめていることは、ビットコインへのポジティブな見方をはじめ、個人投資家としては考えさせられますね。
- 同社のマイケル・セイラーCEOは、テスラのイーロン・マスク氏に対して、ツイッター上で「テスラの貸借対照表を米ドルからビットコインに交換する」ことを提案した、といわれています。
このご両名のツイートは、(何かに投資するというよりも)IFRSの「機能通貨」の発想に似ています。今後、米ドルの基軸通貨としての地位が衰退していって、ビットコインのようなデジタル資産に移行していくことを示唆しているのか、今の時点ではこのツイートの意味について何ともいえません。
しかし、Ark Investのキャシー・ウッド氏のコメントを引用すれば、「従来の常識に囚われていると、破壊的な変化の正しい側にいることができなくなる」のかもしれません。
(2021年2月17日追加)
マイクロストラテジーは2021年2月16日、転換社債を再度発行し、6億ドルを調達すると発表しました。調達資金はビットコイン投資に充てる予定です。
Bitcoin Treasuries