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コラム

SaaS企業の決算で見かける「ARR(Annual Recurring Revenue)」「RPO(Remaining Performance Obligation)」とは何か?

この記事は、米国株「決算発表の見方」特集の一環で書いています。

アドビの決算発表をみてみよう

下記は、アドビ(ADBE)が2021年6月17日に発表した、2021年度2Q(3月~5月)決算発表のプレスリリースの一部です。

アドビの年次決算は「11月末」で、結構珍しいです。他に11月決算の主要な企業は、アメックスとブロードコムくらいです。

(クリックで拡大できます。)

好調な決算内容ですね。

ところで、赤い矢印を付けたところで;

  • デジタルメディアのARR(Annual Recurring Revenue)は、対前四半期で5.18億ドル増加して、112.1億ドル
  • RPO(Remaining Performance Obligation)は、対前年同期比で23%増加して、122.3億ドル

と開示されています。

この「ARR(Annual Recurring Revenue)」「RPO(Remaining Performance Obligation)」とは何でしょうか?

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ARR(Annual Recurring Revenue)とは?

ARR(Annual Recurring Revenue)」とは、日本語では、年間経常収益または年間定額収益と呼ばれ、「毎年決まって得られる1年間分の収益」を意味します。ARRは、初期費用などの一時的な収入は除外します。

年間契約のサブスクリプションビジネスを前提にすると、ARRは、

ARR = 前期ARR + 新規顧客ARR ± アップグレード・ダウングレードの差分ARR - 解約顧客ARR

で計算します。

ARRを月単位で計算するのが「MRR(MOnthly Recurring Revenue)」で、計算方法は同じです。この場合のARRは、MRRの12倍とします。

音楽配信サービスなどの月単位契約では、毎月新規契約や解約が発生するため、月単位のMRRによって管理し、年間契約による企業向けのSaaSを提供するビジネスではARRを使用して管理します。

アドビ製品のサブスクリプションは、個人向けの月ごとの契約と、法人・個人向けの1年間ごとの契約が混在していますので、MRRとARRを併用して管理していると考えます。
ARR・MRRの値は、特にSaaSビジネス・サブスクリプションビジネスにおいて、成長性を測定する指標として重要視されています。

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RPO(Remaining Performance Obligation)とは?

RPO(Remaining Performance Obligations)は、日本語にすると「残存履行義務」といいます。

こちらはARRよりも、より会計的な概念です。
近年、収益(売上高)を認識する会計基準が、世界的に整備されて、米国のGAAPでも新しい収益認識基準が使われています(米国基準ではASC 606と言います。IFRSでは15号)。

この基準の中で、収益を認識するときに、複数の段階に分けて、「履行義務を果たしたときに収益を認識する」というルールになっています。したがって、「(解約できないのに)まだ履行義務を果たしていない金額」が重要で、この金額は財務諸表に注記することになっています。

会計的にはObligation(義務)ですが、SaaSビジネス・サブスクビジネスでは、「契約済みで、まだ未計上の売上(将来計上される売上)」という意味です。

以上、決算発表を読むときのご参考になれば幸いです。

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