はじめに
その中で際立っているのが、配当利回りでダントツ1位の、ルーメン・テクノロジーズ(LUMN)という通信会社です。予想配当利回りで10%近い異様な水準になっています。
今回の記事では、このルーメン・テクノロジーズ(LUMN)の「配当利回り10%」をどう見るべきか、まとめておきたいと思います。
2021年4Q決算を受けて急落したルーメン・テクノロジーズ株
ルーメン・テクノロジーズは、2月9日に2021年4Q決算を発表、その結果を受けて株価は以下の様に急落しています。2012年以降の最安値に近づいています。(クリックで拡大できます。)
以下の決算情報のデータ元は、同社IRサイトです。
同社の2021年4Q決算の概要を図示していきます。まず事業セグメント別の収益(売上高)の4半期ごとの推移は、以下の通りです。
同社の収益はすべての事業部門で前年から減少しており、同社が収益面で業界の逆風に直面していることを示しています。
続いて、収益・調整後EBITDA・フリーキャッシュフローの4半期ごとの推移と、調整後EPSと調整後EBITDAマージンの4半期ごとの推移は、以下の通りです。
前述の通り収益が減少トレンドであるものの、調整後EBITDAマージンと調整後EPSは2021年4Qに改善しています。これは主としてコスト削減の結果とみられます。
同社を高い配当利回りに注目した配当狙いの候補とする場合、最も重要な財務指標は、配当の原資となるフリーキャッシュフローです。フリーキャッシュフローは、対前年度では増加しています。
ここで、今回の記事の最大のポイントは、以下の点です。
ここで、今回の決算で最も市場がネガティブに反応したのは、来期の予測数値です。
来期の業績予測は以下の通りです。
- 調整後EBITDAは、2021年度の84億ドルから、2022年度は65億~67憶ドルに大幅減少
- フリーキャッシュフローは、2021年度の37億ドルから、2022年度は16億~18憶ドルに大幅減少
なおフリーキャッシュフローは、1株当たり1.00ドルの配当原資(約10億ドル)としての水準は満たしています。
同社は、通信事業の再構築と資産売却によって、調整後EBITDAとフリーキャッシュフローの減少を見込んでいます。 調整後EBITDAは前年比22%の減少が予想され、またフリーキャッシュフローは継続的なリストラと資産売却によって55%減少、16億~18億ドルの範囲になると予想しています。
(参考)以下は、2021年4Qと2021年度の対前期比較の数値です。
高い配当利回りに注目して、配当狙い候補とする場合の注意事項
上記の決算発表と来期予測をふまえて、高い配当利回りに注目して同銘柄を配当狙い候補とする場合は、以下の点に留意すべきと考えます。
- 来期の業績予想は、きわめて厳しいといわざるをえません。
- 一方で、1株当たり1ドルの配当の継続が明示されています。フリーキャッシュフローは大きく減少するものの、配当原資としての水準は十分に満たしています。
- 足元の株価は売られすぎかもしれませんが、来期の暗い見通しからみて「高い配当利回りを享受するかわりに、株価下落による含み損が増加していく可能性」が十分に考えられると思います。
AT&Tやベライゾンといった高い配当利回りの通信セクター銘柄は、高い配当利回りを相殺するかたちで、株価がダラダラと下がって含み損が発生しがちであることに注意が必要です。
その中でも、このルーメン・テクノロジーズはその特徴が顕著ですね。
以上、ご参考になれば幸いです。