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(2)米国株配当利回りランキング(S&P500)【随時更新】
(3)米国の主要な「高配当ETF」の構成銘柄をみてみよう
(4)全世界(米国以外)の主要な「高配当ETF」の構成銘柄をみてみよう
(5)タバコ関連銘柄(アルトリア、フィリップモリス)が「高配当株」である理由
(6)長期投資の狙い目セクター「食品株」を分析してみよう
(7)AT&Tの配当利回りは、今度どうなるか?
(8)AT&Tの減配は、株主に対する裏切りか?
AT&Tが、メディア事業を分離するメガディールを発表
既報の通り、2021年5月17日、AT&Tは「ワーナーメディアのメディア事業を分離し、ディスカバリーと統合する」という巨大ディールを発表しました。AT&Tは、5Gとファイバーインターネットのコアドメインに焦点を回帰させ、一方でディスカバリー側は、CNN・HBO・HGTX・フードネットワークなどを展開する新しい巨大エンターテインメント企業が誕生することになります。
AT&Tの株主は、ワーナーメディア+ディスカバリーの新メディア会社の71%を所有し、ディスカバリーの株主が残りを所有します。 合併は2022年半ばに完了する予定です。
AT&Tは、「通信とメディアの融合」という壮大なテーマを諦めて、身軽にして本業でベライゾンとの5G競争に専念、ということですね。
5月17日(月)、株式市場では両社にとって望ましいという見方から、両銘柄とも上昇して始まりましたが、AT&Tは減配・配当利回りの低下が嫌気されて下げに転じ、終値31.37ドル(▼2.7%)。また動画配信業界の競争激化懸念から、ディズニー▼2.0%、ネットフリックス▼0.9%、バイアコムCBS▼1.3%と売られました。
5月18日(火)、AT&Tは終値29.55ドル(▼5.8%)で、S&P500銘柄中最大の下落でした。
5月20日(木)、AT&Tは終値29.64ドル (△2.35%)で引けています。
スピンオフ後のAT&Tの配当利回りは?
AT&Tは、このディールの一環として、配当金をフリーキャッシュフローの約40%の配当率に「リセット」すると発表しました。経営陣は2023年のフリーキャッシュフローを少なくとも200億ドルと見積もっており、年間配当金は約80億ドル、1株当たり約1.11ドルになります(AT&Tの発行済み株式数は約71.9億株です)。(参考文献:バロンズ)
ちなみに先週金曜引け(ニュースが出る前)のAT&Tの株価は、32.24ドル。予想配当率(1株当たり配当)が6.46ドルで、予想配当利回りは6.46%でした(データ元はYahoo Finance)。
スピンオフ後のAT&Tが、ベライゾンコミュニケーションズ(VZ)と同じ水準のパフォーマンスを出すと仮定すると、ベライゾンの現在の4.3%と同じ年間配当利回りを想定して、1株あたり約25.88ドルの株価が逆算されます。(参考文献:バロンズ)
なおワーナーメディア+ディスカバリーの新メディア会社を評価することはより困難な作業です。将来のストリーミング市場の成長予測と、その中での新会社のポジションに左右されます。また新会社は、成長が期待できるストリーミング事業だけでなく、「コードカッティング」で市場が縮小するケーブルテレビ事業も含んでいます。
結論1
スピンオフ後に新規にAT&Tの株主になる場合、これまでのように高い配当利回りに妙味があるかどうかは、AT&T株価の行方次第ですね。上記の通り、約25.88ドルの株価でベライゾン並みの配当利回り4.3%、が一応の尺度となると思います。
結論2
高い配当利回りに妙味ありと判断して投資していた既存のAT&Tの株主は、配当率の低下、配当利回りの低下というデメリットに直面しますが、ワーナーメディア+ディスカバリーの巨大メディア会社の株が与えられます。そのメリット側の評価は、このメディア会社の将来のパフォーマンス次第ですね。