(1)SPACの概要
(2)SPACは普通のIPOより収益性が悪いことに注意!
(3)バーゲンセールのSPAC続出。ただし高級SPACは安くない。
(4)SPACの下落で利益を狙うETF「インバース型SPAC・ETF」が登場
(5)アックマン氏の高級SPAC「PSTH」、UMG株式10%取得で複雑な展開へ(派手な合併上場を期待していた投資家は失望売り)
(6)アックマン氏の巨大SPAC、UMG株取得を断念(新ターゲットはどうなるか?)
(7)SPAC上場を急減させたSEC文書(ワラントの負債処理)の背景
はじめに
前回の記事で、SPACの概要や、昨年(2020年)のSPACの新規上場数が248件と急増したこと、また投資家から見たメリット・デメリットなどをご紹介しました。
また、最大のメリットを享受するのは(投資家ではなく)多額の成功報酬を得るスポンサーで、また2020年にSPACが急増した背景としては、新型コロナによる各国の中央銀行の超緩和政策で、過剰な資金が流入したことなどもご説明しました。
今回の記事では、急増するSPACについて、注意したほうがよいと思われるデータをご紹介します。
「投資家からみて、SPACの合併後のリターンは、普通のIPOのリターンより収益性がとても悪く、SPACの7割はマイナス(損失)になっている、というデータです。
SPACの合併後、3割の会社だけがプラスのリターン
SPACが買収先を見つけて合併した場合の、その後の株価のパフォーマンスについて、以下の興味深い記事をご紹介します。
ルネサンス・キャピタル社の記事:
「SPACの平均リターンは、従来のIPOのリターンを下回っている」
SPAC returns fall short of traditional IPO returns on average
2020年はSPACの上場数が記録的な増加となりましたが、合併後のSPACのリターンは停滞したままです。同社は、この調子でいけば、2年後に、(ターゲット企業の買収失敗によって)投資家への資金の返還が記録的な増加になるかもしれない、と予測しています。
ルネサンス社の分析結果のポイントは、以下の通りです。
2015年~2020年の SPACのIPOは、合併後のパフォーマンスが停滞しています。
2019年~2020年のSPACの合併は、2016年~2018年の合併をアウトパフォームしています。
合併が保留(ペンディング)中のSPACは、合併後のSPACよりもパフォーマンスが優れています。
大規模なSPACの合併は、小規模なSPACの合併をアウトパフォームしています。
ヘルスケアとテクノロジー関連のSPACはアウトパフォーム、一方でエネルギー関連のSPACはアンダーパフォームしています。2015年以降の313件のSPACのIPOのうち、93件が合併を完了し、株式公開しています。これら93件のSPAC合併後の平均パフォーマンスは、平均では-9.6%の損失、中央値は-29.1%でした(普通株)。一方、2015年以降の従来のIPOの平均リターンが47.1%です。上記93件のSPACの合併のうち29件(31.1%)だけがプラスのリターンとなっています(2020年9月末時点)