(1)SPACの概要
(2)SPACは普通のIPOより収益性が悪いことに注意!
(3)バーゲンセールのSPAC続出。ただし高級SPACは安くない。
(4)SPACの下落で利益を狙うETF「インバース型SPAC・ETF」が登場
(5)アックマン氏の高級SPAC「PSTH」、UMG株式10%取得で複雑な展開へ(派手な合併上場を期待していた投資家は失望売り)
(6)アックマン氏の巨大SPAC、UMG株取得を断念(新ターゲットはどうなるか?)
(7)SPAC上場を急減させたSEC文書(ワラントの負債処理)の背景
PSTHがUMG株の10%取得を断念
これについて昨日7月19日、(アックマン氏のヘッジファンドである)パーシング・スクエアは新たに、「米SEC(証券取引委員会)の承認が得られず、PSTHはUMGの10%の株式取得計画を断念。同UMG株の取得はSPAC経由ではなく、パーシング・スクエアが長期株主としてすすめる。」と発表されました。
パーシング・スクエアとSECは度重なる協議を行いましたが、SECは「PSTHがこの取引を完了できることの確信を持てず、また今回のスキームがNYSEの規定を満たさない可能性がある。」と懸念を示していました。
PSTHのプレスリリースはこちらです。
Yesterday, our board of directors unanimously determined not to proceed with the Universal Music
Group transaction, and to assign our share purchase agreement to Pershing Square Holdings, Ltd.
(LN:PSH) (LN:PSHD) (NA:PSH) and affiliates (“PSH and affiliates” or “Pershing Square”). Pershing Square has also agreed to assume the Vivendi indemnity agreement and our UMG transaction costs.
昨日のPSTHの株価は、以下の通りです。(左側の矢印は、前回の発表のときです。)
そもそも、PSTHのUMG株取得のスキームはどういうものか?
今回断念したアックマン氏のスキームは、そもそもどういう内容だったのかは、前回の記事をご覧いただきたいのですが、あらためてまとめると以下のようなものです。
- PSTHは、今年後半、UMGのユーロネクスト・アムステルダムへの上場を完了した後に、取得したUMG株式をPSTHの株主に配布します。通常のSPACのように、PSTHがUMGと合併することはありません。
- UMG株取得に必要な資金は約41億ドルで、PSTH は、信託現金 (40億ドル+利息) と、パーシング・スクエア・ファンドおよび関連会社の先物購入契約の行使による約16億ドルの追加資金を使います。その結果、残りの15億ドルは PSTH Remainco (PSTHの残り)によって保持されます。
- このディールに反対のPSTH株主は、1株あたり約20ドルで株式を償還する機会があります。
- PSTHはUMG株式の分配後も15億ドルの現金を保有する公開会社であり続け(SPACではなくなりますが)、新しい事業結合パートナーを探します。
- さらに、パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントは、パーシング・スクエアSPARホールディング(SPARC)を設立、SPARCは、SPARC株式を1株20ドルで購入できる権利(SPAR:Special Purpose Acquisition Right)をPSTH株主に分配します。
結果的にPSTHの株主は、以下の3つの証券を所有することになります。
(1)比例配分されたUMG普通株式(PSTH1株あたり約14.75ドルに相当)
(2)PSTHの残り(1株あたり約5.25ドルのキャッシュを保有)
(3)SPARC株式を1株20ドルで購入できる権利(SPAR:NYSEで取引予定)
ややこしいですね。
まとめると:
PSTHの株主からみると、「このSPACがUMGと合併することはなく、投資額の約4分の3がUMG株として付与されて、残り約4分の1はPSTHとして引き続き新たな買収先を探す(ただしPSTHはSPACではなくなるので、買収期限はなくなる)。なおパーシングスクエアの関係会社のワラントが追加で付与される。」という仕組みになります。
PSTHの新たな買収ターゲットはどうなる?
そもそも、映画にもなったアックマン氏という著名投資家のSPAC「PSTH」は、2020年7月に上場、これまでで最大のSPACであり、IPOの調達は40億ドルで、さらにターゲット先の合併時にパーシングスクエアによる先物購入契約が付随しているので、合計70憶ドルの巨額ディールになります。したがって買収ターゲット先は、真に価値のあるユニコーンに絞られます。
バロンズは、根拠のない噂レベルの情報として、これまでPSTHの買収ターゲットとして挙げられた企業として以下を挙げています。