(1)事業別の半導体関連銘柄リスト
(2)半導体関連ETF「SOXX」と「SMH」
(3)「IDM」と「ファブレス」で分類してみよう
(4)半導体の製造工程で分類してみよう
(5)TSMCの米国アリゾナ新工場関連の記事まとめ(随時更新)
(6)「SOX指数」とは(長期の片対数チャートで見てみよう)
(7)ニコンはなぜASMLに勝てなかったのか
(8)オランダのシリコンバレー「アイントホーフェン」てどんなところ?
(9)TSMCが半導体製造の「後工程」のR&D拠点を日本に作るのはなぜか?(TV報道に要注意)
(10)インテルが投資計画を発表。TSMCに「どのように(How)追いつくのか」が見えない市場の反応は・・・
(11)半導体業界を根本から変えた台湾TSMCの創業者「モリス・チャン氏」
(12)台湾加権指数は、IT銘柄が5割を占める「テック型株価指数」
(13)日本の半導体産業は「戦後の焼け野原」
(14)インテルの大規模投資は、復活の序章か?(Global Foundriesの買収交渉中)
(15)自動車産業の半導体不足は、ジャストインタイムへの依存による「自業自得」か?

はじめに
半導体をめぐる米国の国家戦略を背景として、ここのところインテルの話題が多くなってきていますので、まとめておきたいと思います。長らく低迷を続けてきた巨人インテルは、復活するでしょうか?

なおインテルの今月の決算発表(4~6月期:2021年2Q)は、7月22日(今週の木曜日)の予定です。
足元のインテルの株価推移
下のチャートは、2021年年初からのインテル(青)の株価推移を、SOX半導体指数(オレンジ)、AMD(緑)、エヌビディア(赤)、TSMC(紫)と相対比較したものです。

足元のインテル株は、SOX半導体指数とほぼ同様のパフォーマンスですね。
インテルがGlobal Foundriesの買収を交渉中
Intel Is in Talks to Buy GlobalFoundries for About $30 Billion(出所:WSJ)
GF社は、以下のような企業です。
- 非上場企業(→したがって公開情報が少ない)
- 本社はニューヨーク州マルタ
- アブダビの政府系ファンドであるMubadala Investment(ムバダラ・インベストメント)が保有
- TSMC、サムスンに次ぐ半導体ファウンドリ世界第3位
- 米国の3か所を含む世界の少なくとも5か所で工場を運営(米国、ドイツ、シンガポール)
- 同社の顧客には、クアルコム(QCOM)、およびインテルのライバル企業であるAMDが含まれる
- 2018年に最先端プロセスの競争からは離脱したものの、FD-SOIと呼ばれるプラットフォームで独自の地位を築いており、2021年6月にシンガポールに300mmウエハー工場を新設すると発表
- 2021年4月に、ムバダラ・インベストメントが、GF社について米国市場でIPOを行う準備を開始したと報道(評価額約300億ドル)
GF社の買収交渉は、インテルの下記「IDM2.0」戦略の中の「専業ファウンドリー事業への参入」が進展中であることを明らかに示しています。買収交渉額の300億ドルは、上述のムバダラ・インベストメントが、同社について米国市場でIPOを行う準備を開始したと報道された中の評価額約300億ドルと同じ金額です。
2021年2月、インテルではゲルシンガー氏が新CEOに就任、新しい半導体製造製造戦略「IDM 2.0」戦略として、大規模な投資を発表しました。IDM 2.0では、内製の強化、他社のファウンドリー活用の拡大、そして専業ファウンドリー事業への参入の3つが柱となります。
インテルからみれば、GF社はクアルコムやインテルの競合であるAMDを含めた顧客基盤を有しており、またインテルには無いファウンドリとしての企業文化を有している可能性があります。一方で、GF社からみれば、インテルの高度な製造技術を活用することができます。
2021年3月、バイデン大統領は、サプライチェーンの強化と半導体不足解消に向けて、半導体製造を強化すべく500億米ドルを投入すると発表。2月には大統領令を発令し、半導体や電気自動車向けバッテリーなどのサプライチェーンについて、100日間のレビューを行うことを確約しました。
バロンズによれば、インテルのGF社買収が実現しても半導体業界が再編される可能性は低いとみていますが、上記バイデン政権の国家戦略を背景として、インテルはきわめて良いタイミングで米国内の製造能力を拡大させることを示しています。なおGF社のEBITDAマージンは、約20%と見込まれています。(出所:バロンズ)
(参考)インテルのその他の動向
2021年4月、ゲルシンガーCEOは、半導体関連サプライチェーンの問題を巡りホワイトハウス当局者と会談、自動車メーカー向け半導体の設計を手掛ける企業がインテルの工場ネットワークで生産する方向で協議を進めており、6─9カ月以内の生産を目指していると報道されています。
インテル、自動車向け半導体生産で協議 6─9カ月以内に=CEO
(出所:ロイター、2021年4月13日)
2021年6月、インテルは、(オープンソースの命令セット・アーキテクチャ「RISC-V」ベースのプロセッサ・コアを手掛ける)SiFive社を20億ドルで買収する方向で検討に入ったと報じられました。
Chipmaker SiFive Is Said to Draw Intel Takeover Interest
(出所:Bloomberg、2021年6月11日)