(1)事業別の半導体関連銘柄リスト
(2)半導体関連ETF「SOXX」と「SMH」
(3)「IDM」と「ファブレス」で分類してみよう
(4)半導体の製造工程で分類してみよう
(5)TSMCの米国アリゾナ新工場関連の記事まとめ(随時更新)
(6)「SOX指数」とは(長期の片対数チャートで見てみよう)
(7)ニコンはなぜASMLに勝てなかったのか
(8)オランダのシリコンバレー「アイントホーフェン」てどんなところ?
(9)TSMCが半導体製造の「後工程」のR&D拠点を日本に作るのはなぜか?(TV報道に要注意)
(10)インテルが投資計画を発表。TSMCに「どのように(How)追いつくのか」が見えない市場の反応は・・・
(11)半導体業界を根本から変えた台湾TSMCの創業者「モリス・チャン氏」
(12)台湾加権指数は、IT銘柄が5割を占める「テック型株価指数」
(13)日本の半導体産業は「戦後の焼け野原」
(14)インテルの大規模投資は、復活の序章か?(Global Foundriesの買収交渉中)
(15)自動車産業の半導体不足は、ジャストインタイムへの依存による「自業自得」か?
はじめに
このシリーズ記事では、米国株の半導体関連銘柄をまとめていきたいと思います。
米国株に初めて投資される方は、半導体に関連する銘柄がとても多いので最初はわかりづらいと思います。
今回は、「IDM」と「ファブレス」という重要なキーワードで、半導体関連銘柄を分類してみたいと思います。
「IDM」と「ファブレス」とは
「IDM」とは「Integrated Device Manufacturer」の略です。半導体製造業においては、自社で全ての工程(設計・製造・組み立て・検査・販売)を一貫して行う設備を有している半導体製造の業態を意味します。いいかえると、IDMは自社で工場を持つ「垂直統合型」の半導体メーカーのことをいいます。
一方「ファブレス」とは、「fabがない」、すなわち「工場がない」ことを意味します。半導体製造業において「ファブレス」とは、半導体製造設備を所有せずに、自社で設計した半導体を外部のファウンドリとよばれる製造受託業者に製造委託し、販売は自社で行う半導体メーカーのことをいいます。
ファブレスが最も普及している業種の一つが、半導体業界です。半導体製造装置の投資には莫大な費用がかかる一方で、技術革新・製品の世代交代のスピードが早く設備投資・資金調達などのリスクが大きいため、製造設備を所有せずに自社は研究開発・設計に専念することで、比較的安定した事業を行うことができる可能性があります。
(後述しますが、半導体の種類によっては、内製の方がメリットが大きい場合があります。)
半導体メーカーの「IDM」「ファブレス」分類
以下は、第1回めの記事「事業別の半導体関連銘柄リスト」と全く同じ表です。
このうち半導体メーカーを、「IDM」を赤、「ファブレス」を青で分類すると、以下のようになります。
事業内容 (大区分) | 事業内容 (小区分) | 社名(ティッカー) | 米国株.com 記事 |
半導体メーカー | PC、サーバー向けCPU | インテル(INTC) | 米国株.com |
AMD(AMD) | 米国株.com | ||
GPU | NVIDIA(NVDA) | 米国株.com | |
スマホ・通信用半導体 | アップル(AAPL) | 米国株.com | |
クアルコム(QCOM) | 米国株.com | ||
ブロードコム(AVGO) | 米国株.com | ||
FPGA | ザイリンクス(XLNX) | 米国株.com | |
メモリ(DRAM, NAND) | マイクロン・テクノロジ(MU) | 米国株.com | |
アナログ半導体 | テキサス・インスツルメント(TXN) | 米国株.com | |
アナログ・デバイセズ(ADI) | 米国株.com | ||
スカイワークス(SWKS) | 米国株.com | ||
NXP(NXPI) | 米国株.com | ||
マキシム(MXIM) | 米国株.com | ||
ファウンドリ | 製造受託 | TSMC(TSM) | 米国株.com |
半導体製造装置 | CVD、スパッタ、CMP工程 | アプライドマテリアルズ(AMAT) | 米国株.com |
露光工程 | ASML(ASML) | 米国株.com | |
エッチング工程 | ラムリサーチ(LRCX) | 米国株.com | |
検査測定工程 | KLAテンコール(KLAC) | 米国株.com |
半導体メーカーのすべてが、ファブレスの業態を選択しているわけではありません。
たとえば、「アナログ半導体」の分野は、「設計技術と製造技術の擦り合わせ」が重要なので、ファブレスよりもIDMの方がメリットが大きいとされています。
一方、色をつけた上半分(インテルからザイリンクスまで)は、ロジックICと呼ばれる分野で、製造を外部委託するファブレスが大部分を占めています。ロジックICの分野では、設計と製造を分業した方が、より事業効率が良いという実例が多く見られています。
ここで言えることは、「ロジックICの分野では、他の同業大手すなわち、AMD、NVIDIA、アップル、クアルコム、ブロードコム、ザイリンクスはすべてファブレスであるのに対して、インテルだけがIDMである」という点です。
なお、台湾のファウンドリTSMCは、上記のAMD、NVIDIA、アップル、クアルコム、ブロードコム、ザイリンクスのすべてから製造委託を受けています。
インテルの業績や株価が、同業のなかで精彩を欠いているのは、別記事でも紹介した通りです。
インテルは、従来から「インテルのMPU技術は設計技術と製造技術をすり合せたもので、他のロジックICのようにファブレスとファウンドリに分離させない方が良い」という主張を繰り返しています。
しかし、同じくPC・サーバー向けのCPU製造のライバルAMDは、TSMCを活用して急成長しており、また直近はザイリンクスの買収が合意されて、AMDはさらにインテルのシェアを奪っていく勢いがあります。
インテルが今後ファブレスに向かうのか、注目されます。TSMCが米国内で工場建設予定であること、米中の半導体の覇権争い、ロジックICメーカーのM&Aなどが複雑に絡んで、事態は進んでいくと思われます。