マイクロソフトがアクティビジョン・ブリザード(ATVI)を687億ドル(約7.9兆円)で買収を計画
マイクロソフトは2022年1月18日、ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザード(ATVI)を687億ドル(約7.9兆円:1株当り95ドル)で買収することで両社の取締会が合意した、と発表しました。買収後は、売上高でテンセント、ソニーに次ぐ世界3位のゲーム企業になります。全額現金で買収、2023年の手続き完了を目指します。買収の成立には、規制当局やアクティビジョン株主による承認が必要です。
マイクロソフトにとって過去最大のM&Aで、有力ゲームスタジオを取り込むことで、ゲーム機やパソコン、クラウド、携帯電話にまたがりゲーム事業を拡大していく計画でです。
Microsoft to acquire Activision Blizzard to bring the joy and community of gaming to everyone, across every device
1兆円を超えると「大型買収」というイメージですが、今回の買収金額は、何と687億ドル(約7.9兆円)、しかも現金払いです。ちなみにソニーの時価総額は現在約16兆円ですので、今回の買収がどれだけデカいかがわかると思います。
なお、マイクロソフトの時価総額は現在約2.3兆ドル(約260兆円)で、日本の国家予算(2022年一般会計:107兆円)の2.4倍にのぼります。
昨日引け時点のATVIの日足チャートは、以下のような状況です。
昨日のATVIの株価は90ドルに届かず、巨大テック企業に対する反トラスト法適用を推進するバイデン政権のもとで、この巨大ディールが完了するかについて市場が懐疑的であることを示しています。 ちなみに、ソニーが本日の東証で約13%下げていますね。
アクティビジョン・ブリザードは巨大ゲーム会社
アクティビジョンはセクハラなど相次ぐ不祥事をめぐって社内外から批判を浴びていました。今年1月17日、不適切行為疑惑への対応で、2021年7月以降約40人を解雇した他、約40人を処分したと発表しまた。こうした同社の課題が、マイクロソフトによる買収合意を後押ししたとみられています。
マイクロソフトの過去の買収事例
マイクロソフトは、過去にノキアの買収で失敗しています。
Skypeも買収後に衰退していきましたね。
マイクロソフトは、ビル・ゲイツ氏が2000年までCEOを務めた後、ビル・ゲイツ氏が採用した30人目の社員であるスティーブ・バルマー氏に引き継ぎました。この時期のマイクロソフトは、Windowsで圧倒的なシェアを占めていましたが、ITのモバイル化やクラウド化という技術革新の波に乗り遅れていました。
2011年、マイクロソフトは、当時携帯電話市場で首位のノキアと手を組み、ウィンドウズモバイルを搭載した「ウィンドウズフォン」の販売を開始しますが、スマートフォン市場はアップルのiOSとグーグルのアンドロイドが市場を既に席巻してしまっていました。その後、スティーブ・バルマー氏は、2013年にノキアを約7,000億円で買収し、引き続き真っ向からアップルのiOS、グーグルのアンドロイドに戦いを挑みますが、戦局を覆すことはできず、失敗に終わったノキア買収の責任をとって辞任することになりました。
2014年に3代目CEOに就任したサティア・ナデラ氏は、あらゆるサービスのモバイル化とクラウド化を推進します。自社のOSにこだわり、OSと一緒にソフトを売るという従来の戦略を180度転換し、クラウド版Officeにサブスクリプションを導入するなどの大胆な施策により、マイクロソフトのビジネスモデルを大きく変えました。
2017年あたりから、大改革は同社の業績に徐々に反映されるようになり、足元は最高益を更新する成長企業に復活しています。
サティア・ナデラCEOが就任してからのマイクロソフトは、以下の様に抜かりのないM&Aを続けています。
Linked In
Linked Inは、ビジネスに特化したSNSです。
買収年:2016年
買収価額:262億ドル
Webサイト
GitHub
GitHubは、2,800万人以上のソフトウェア開発者が参加するソフトウェア開発プラットフォームです。同社のオープンソースの文化に配慮して、マイクロソフトは、何も変えない方針を発表しています。
買収年:2018年
買収価額:75億ドル
Webサイト
Zeniax Media
Zeniaxは、ゲーム開発企業Bethesda Softworksの親会社です。
買収年:2021年
買収価額:75億ドル
Webサイト
Nuance
Nuance(ニュアンス)は、ヘルスケア分野の人工知能(AI)や音声認識を手がける企業です。
買収完了予定は、2022年2月頃と見られています。
買収価額:197億ドル
Webサイト
現在のマイクロソフトは、ソフトウェア・クラウドコンピューティング・OS・ゲーム・広告と、収益性の高い複数の事業がうまくバランスされている点で、GAFAMの中でも際立っていますね。
盤石な感じです。