はじめに
グロース株、バリュー株、ディフェンシブ株、といった株式の分類の中で、ときどき「クオリティ株」という用語を見かけます。

クオリティ株は、「品質が高い株」といった意味であることは想像できますが、具体的にどのように品質が高いのか、いま一つピンと来ないですね。
今回は、クオリティ株についてまとめておきたいと思います。
クオリティ株とは?
クオリティ株の明確な定義はありませんが、以下のような条件を満たしている銘柄を指しています。
- 資本効率が高い
- 財務健全性が高い
- 競争力が高く、持続的に安定成長している
資本効率の指標の代表としてはROE(資本利益率)、財務健全性の指標の代表としては財務レバレッジがありますね。
クオリティ株の最大の特徴は、「ROEが高く、財務レバレッジが低い」点です。
ここで、有名なROEの分解式(デュポン式)をみてみましょう。
A:当期利益/売上高は、売上高利益率と呼びます。
B:売上高/総資産は、総資産回転率と呼びます。
C:総資産/自己資本は、財務レバレッジと呼びます。
(A x Bは、ROA(Return on Asset)と呼びます。)
クオリティ株の「ROEが高く、財務レバレッジが低い」という状態は、上の式でいうと、財務レバレッジ(C)が低い一方で、(A) 売上高利益率 X (B) 総資産回転率が高いこと、 中でも特に(A) 売上高利益率が高いこと、を意味しています。

クオリティ株は、高いブランド価値やビジネスモデルの優位性によって競争優位の状態にあるために、財務的に無理をしなくても(財務レバレッジを上げなくても)高い利益率を保持でき、持続的に安定成長している銘柄です。
クオリティ株に関連する株価指数
クオリティ株に関連する株価指数として、「S&P500クオリティ・インデックス(S&P500 quality index)」という指数があります。
S&P500クオリティ・インデックスは、以下のように算定される「クオリティ・スコア」によって、S&P500のクオリティ株式に連動するように設計されています。
【クオリティ・スコアの算定方法】
- S&P500株価指数の構成銘柄から、「クオリティ・スコア」の上位100銘柄を抽出します
- 「クオリティ・スコア」は、以下の3つの要素によって判定します
- ROE:直近12カ月(4四半期)の実績PER / 直近のPBRで割った値
- アクルアル・レシオ(Accrual Ratio):純営業資産(NOA)の前期からの増減(期末のNOAー前期末のNOA) / 2期間のNOAの平均値
※NOA(Net operating assets:純営業資産) = 営業資産 – 営業負債 - 財務レバレッジ:有利子負債 / 自己資本
※前述のROE式の中の財務レバレッジと分子が違いますが、類似の概念です。
- 上記クオリティ・スコアと浮動株時価総額によってウエイト付けします。
- 構成銘柄は、年2回の頻度でリバランスされます。
S&P500クオリティ・インデックスの直近の上位10銘柄を、通常のS&P500指数の上位10銘柄(2021年9月3日時点)と比較すると、以下の通りです。
順位 | S&P500クオリティ・インデックス | S&P500 |
1 | アップル | アップル |
2 | マイクロソフト | マイクロソフト |
3 | JPモルガン・チェース | アマゾン |
4 | P&G | フェイスブック |
5 | ビザ | アルファベット (クラスA株) |
6 | バンクオブアメリカ | アルファベット (クラスC株) |
7 | マスターカード | テスラ |
8 | アドビ | エヌビディア |
9 | シスコ | バークシャー・ハサウェイ |
10 | ファイザー | JPモルガン・チェース |

クオリティ株の典型的なイメージとしては、ハイテクセクターや金融セクターに多く、競争優位を有しており、持続的に安定成長している銘柄群ですね。
S&P500クオリティ・インデックスに連動するETF
S&P500クオリティ・インデックスに連動するETFとして、「SPHQ(Invesco S&P 500 Quality ETF)」があげられます。
クオリティ株への投資に関する特徴
クオリティ株に投資する上での最大の特徴は、「常に割高である」という点です。

クオリティ株は、ピカピカの優良銘柄ですので、常に株価は高いわけです。
つまり、短期的には、クオリティ株のパフォーマンスは良くないことが多い、といえますね。
一方で、クオリティ株は、持続的に成長が期待できる銘柄ですので、長期投資に適しているといえます。


なお、グロース株とバリュー株は、ローテンション的に、どちらが一方がパフォーマンスが良いときはもう一方のパフォーマンスが悪かったりしますね。また相場状況によっては、グロース株もバリュー株も売られるときもあります。このような場合に、ポートフォリオの中にクオリティ株を含めると、短期的にもリスクを分散できると考えます。
