(1)2021年は「グローバル投資戦略」で世界の様々な投資対象に目をむけよう
(2)グローバル投資戦略は、各国の「経常収支・貿易収支」の理解からはじめよう
(3)グローバル投資戦略として目先は「オーストラリア」に注目してみよう
(4)グローバル投資戦略として、各国の通貨を「グルーピング」してみよう
(5)穀物系のETN「JJG」(とうもろこし・大豆・小麦)に注目してみよう
(6)テーパリング・原油高で、「カナダドル(CAD)」に注目してみよう
「経常収支・貿易収支」でその国の経済構造や、他国との関係がわかる
別記事『2021年は「グローバル投資戦略」で世界の様々な投資対象に目をむけよう』の中で、グローバルに投資対象を選ぶ戦略について、書きました。
これから何回かの記事に分けて、グローバル投資について、具体的に「最近の相場環境からどこの国のどの金融商品が利益を狙えるか」についてまとめていきたいと思います。
まず準備として今回は、「経常収支、及び貿易収支」についてまとめます。具体的には、米国、日本、ユーロ圏全体、ドイツ、英国、オーストラリア、中国、カナダの全部で8つの国・地域の経常収支・貿易収支を紹介します。
当記事で使用する各国の値は、IMFの国際収支関連のWebサイト”BOP”(Balance of Payment and International Investment Position)のデータを使用しています。(最新データは、2020年第3四半期までです。)
Balance of Payment (BOP)とは、「国際収支」を意味します。今回分析する「経常収支」(および経常収支の一部である「貿易収支」)は、国際収支の一部ですので、今回はIMFの国際収支データの一部を使います。
なお経常収支は、(1)貿易収支、(2)サービス収支、(3)第一次所得収支(海外からの利子、配当金など)、(4)第二次所得収支(政府開発援助(ODA)の現物援助など)の4つで構成されます。
各国の経常収支・貿易収支の分析
青い折れ線グラフが経常収支です。
その内訳として、貿易収支(オレンジ)、サービス収支(グレー)、第一次所得収支(黄色)、第二次所得収支(青色)を積み上げ棒グラフで表示しています。
米国の経常収支・貿易収支
米国は、恒常的な貿易赤字・経常赤字の国です。
特に2020年は、コロナ禍による輸出の落ち込みで、貿易赤字はリーマンショック(2008年)以来の規模に拡大し、経常収支の赤字も急拡大しています。
貿易赤字の対相手国別の内訳では、対中国の貿易赤字が際立って大きく、2番手として、メキシコ、日本、ドイツが同じ水準で並んでいます。米国は、中国に対しては輸入が輸出の3倍以上、また日本やドイツに対しては輸入が輸出の約2倍にのぼります。トランプ前政権は貿易赤字の縮小を目指して関税の引き上げなどの米中貿易戦争を引き起こしましたが、新型コロナがその達成を大きく妨げました。
米国株だけに投資していると米国の経常収支にあまり関心がないと思いますが、FX(外国為替)における米ドルと他通貨との通貨ペアや、その他のグローバル投資をはじめる場合は、まず米国の経常収支の構造について理解しておくことは、とても重要だと思います。
日本の経常収支・貿易収支
日本は安定した経常黒字国であり、これが日本経済、および通貨円の強さの一つの要因とされています。ただし近年、日本の経常収支黒字の大半は、「第1次所得収支(配当や金利)」の黒字に依存しており、「貿易収支」は全体のわずかにすぎないことがわかります。特に2020年は、コロナ禍で貿易収支はほぼ収支ゼロの水準です。
1980年~1990年台は日本は世界最大の貿易黒字国でしたが、日本はすでに「貿易立国」から「投資立国」に変容しています。
ユーロ圏・およびドイツの経常収支・貿易収支
まず、グローバル投資の基本として、「ユーロ圏全体としては、世界最大の経常黒字である」ことが重要だと思います。なお、その内訳としては、ユーロ導入以降、ドイツ、オランダに集中して経常黒字が恒常化している一方、スペイン、イタリア、ギリシャ等では経常赤字が恒常化しており、ユーロ参加国間の経常収支の不均衡が常態化しています。
ドイツは、ユーロ発足直後の2000年頃を機にして、経常収支が黒字転換し、それ以降、経常黒字が恒常化しています。ドイツは、1980年台までは黒字でしたが、1989年の東西ドイツ統合によって赤字に転落、1990年台はずっと赤字でした。しかし2000年のユーロ発足の後は、自国単独の国力より安く評価される通貨ユーロの恩恵を受けて、輸出を拡大できました。この点でドイツはユーロ統合の最大のメリットを享受しているといえます。
世界の経常収支の関係を理解すると、米国株投資でもおなじみの銘柄であるオランダ企業のASMLやNXPなどの見方がかわってくると思います。
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英国の経常収支・貿易収支
ブレグジットの前から英国は、万年貿易赤字の国です。英国は、製造業が大きく衰退した一方で、「サービス化」(特に金融業や不動産業)が特に進展した国の典型例で、万年の貿易赤字は、製造業の衰退と、旺盛な消費による輸入増の結果といえます。
英国の貿易赤字は、国別ではドイツ他の欧州圏からの輸入が大きな割合を占めており、対米国では黒字であることを理解しておく必要があります。
オーストラリアの経常収支・貿易収支
オーストラリアの経常収支・貿易収支の構造は、他の先進国とはかなり異質です。資源国であるオーストラリアは、一次産品を輸出して工業製品を輸入するという、新興国に似た貿易構造を持っています。さらに、上のチャートでわかる通り、直近の2018年~2020年は貿易収支黒字の拡大傾向を示しています。
次の記事で書きたいと思いますが、目先の数カ月は、グローバル投資の中でオーストラリアへの投資に妙味がある、と考えています。(詳しくは次回の記事で。)
中国の経常収支・貿易収支
中国といえば、貿易黒字の国ですが、ただし貿易黒字は、米中貿易摩擦よりも以前から、長期的な減少傾向にあることを理解する必要があります。貿易黒字減少の主な理由は、経済発展・所得水準の上昇による消費増加を背景とした輸入の増加によるものです。なお、コロナ禍で少し減少しているものの)中国はサービス収支の赤字が顕著ですが、この主因は海外旅行者急増によるもので、これも所得水準の上昇が背景にあります。
中国の経常黒字減少の背景を見ていると、日本はその恩恵を受けていることが明らかです。
カナダの経常収支・貿易収支
カナダは、国土は広いですが、経済規模は先進国の中では比較的小さい国です。特徴としては万年の貿易赤字・経常赤字の国です。カナダの貿易構造は極端に米国に依存しており、カナダの米国向けの輸出は全体の4分の3を占めます。また、カナダの輸出の4分の1は原油などの鉱物資源であるため、資源価格の影響を強く受けます。
次回の記事では、グローバル投資の中で特にオーストラリアについて、まとめたいと思います。