はじめに
この記事は、前回の記事より始めたオプション取引特集の2回目です。
別の記事で、
また、(IB証券等に口座がある方は)別記事で紹介するオプション取引(カバード・コール、現金確保プット売り)を併用することで、実質的な利回りを上昇させることができます。』
と書きました。
この考え方は、米国の個人投資家の間では一般的なもので、特に特別なものではありません。
この記事では、この「カバード・コール」と「現金確保プット売り」をまとめておきたいと思います。
「カバード・コール」とは?
カバード・コールは、オプション取引の最も基本的・初歩的なもので、米国の証券会社では現物を買うと「カバード・コールにしておきますか?」といわれるくらいに当り前だそうです。
カバード・コールとは、「現物株の買いに、コールオプションの売りを加える」戦略です。
オプションの売りは損失が無限大なのに、なぜそれが最も基本的な手法なのか?と思われるかもしれません。ポイントは、「現物の買い」と組み合わせるという点です。
カバードコールの損益図を下に掲載します。
株の現物の損益は、「Stock」という細いラインです。コールオプションの売りの損益は、「Call (Sell)」という別の細い線です。結果的に「カバード・コール」の損益は、この2つの細い線を合わせた太い線となります。
株価が上記の「B点」まで上昇すると、それ以上株価が上昇しても、カバード・コールの損益は変わりません。つまりそれ以上の株価上昇の利益を放棄することを意味します。(上昇相場では機会損失が発生する可能性があります。ただし例えば、もともと上図のB点で利益確定売りするつもりだったのであれば、機会損失は発生しません。)
一方、その「B点」より株価が下にある場合、現物株だけの損益よりも、オプションの売りによる受取プレミアム分だけ、常に損益が常に改善されていることがわかりますね。また株価が大きく下がって損切りするとしても、損切りラインを下にずらす(たとえば上図のC点からD点)ことができます。
つまりカバードコールは、一定の水準以下で株価が推移する場合に、パフォーマンスが良くなります。長期所有を前提にした配当株投資でこの戦略を長期的に継続すると、配当金の受け取りによる利回りに、オプションの受け取りプレミアムが上乗せされて、長期的な実質利回りがアップする可能性があります。
この場合、オプションの満期日の数日前の時点での株価の水準によって、以下の様にフォローの作業を続けます。(詳しくは参考書籍をご覧ください。)
- 株価が権利行使価格より大きく下がっているとき :ローリング・ダウン・アンド・アウト(既存のコールを買い戻して、満期日が翌月以降で権利行使価格が現在の株価より下のコールを売り建て)
- 株価が権利行使価格より高いとき:ローリング・アップ・アンド・アウト(既存のコールを買い戻して、満期日が翌月以降で権利行使価格が現在の株価より上のコールを売り建て)
- 株価が権利行使価格より少しだけ下がっ ているとき:ローリング・アップ・アンド・アウト、またはローリング・アウト(既存のコールを買い戻して、満期日が翌月以降で既存コールと同じ権利行使価格のコールを売り建て)
「現金確保プット売り」とは?
次に「現金確保プット売り」をご紹介します。
これは、プットオプションが行使されてその株を取得することを前提に、あらかじめ現金を確保した上で、プットオプションを売る、という戦略です。
すぐにピンとこられるかも知れませんが、現金確保プット売りは結局、「現物株の指値買い」と似ています。
つまりこの戦略は、もともと買いたい株であることが大前提です。
その株を現在の価格(上図の点A)で成行買いする代わりに、権利行使価格が現在より下の価格(上図の点B)のプットオプションを売ることで、まずプレミアムを受け取れる上に、うまく株価が下落すると権利行使価格でこの株を取得することになります。
なお株価が下がらなければ、プレミアムの受け取りだけで現物の取得は無し、です。
また、指値買いは必ずB点まで下がると購入できますが、プットの売りの場合は一旦B点まで下落してもその後株価が回復して現物を取得し損なう、という可能性があります。(もともと買いたい株なので、再度トライすれば良いだけです。)
いずれにしても、もともと買いたい株を安く買えるか、買いそびれてプレミアムを受けとるかなので、リスクはとても低いわけです。
伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏も、この「現金確保プット売り」戦略をとっているとのことです。
以上、配当株投資では、まず株の取得の際に「現金確保プット売り」戦略によって、プット売りのプレミアムを受け取るとともに安く現物株を取得し、その後は「カバード・コール」戦略をとることでコール売りのプレミアムを受け取りながらローリング・アウト等のフォローを続けることで、さらに実質の利回りをアップできる可能性がある、ということをご紹介しました。
なおオプション取引は、上記のような安全な手法が基本です。くれぐれも、裸でオプションを売るといった自己流の危険な手法はやらないでください。
ご参考になれば幸いです。