S&P500は、なぜ500銘柄ではない?
米国の代表的な株価指数の一つである「S&P500株価指数」の構成銘柄は、(2021年4月19日時点)全部で505銘柄あります。なぜ500銘柄ではなく、505銘柄あるのでしょうか?
(なお2021年4月15日、Siemens Healthineersが、Varian Medical Systems (NYSE:VAR)の買収を完了、実質的には、504銘柄となっています。)
理由は、500社のうちの5社が、2種類の種類株式(Class stock:会社が議決権などの権利が異なる株式を発行した場合の各株式のことをいいます)を上場させているためです。該当する企業とティッカー、および種類株式の名称は、以下の通りです。
- GOOGL:Alphabet Inc. Class A
- GOOG:Alphabet Inc. Class C
- FOXA:Fox Corporation Class A
- FOX:Fox Corporation Class B
- NWSA:News Corporation Class A
- NWS:News Corporation Class B
- UAA:Under Armour Inc. Class A
- UA:Under Armour Inc. Class C
- DISCA:Discovery Inc. Class A
- DISCK:Discovery Inc. Class C
アルファベット(グーグル)の種類株式
グーグルは、創設者のラリーペイジ氏とセルゲイブリン氏の支配を維持するために、2014年に株式を分割して種類株式を発行しました。ティッカー「GOOGL」は、クラスA株式と呼ばれ、一般的な普通株式と同様に1株1議決権を持っています。一方ティッカー「GOOG」は、クラスC株式と呼ばれ、株主には議決権がありません。
なお3番目のタイプとしてクラスB株式があります。これは、1株ごとに10株を付与するもので、創設者とインサイダーによって保持されています。クラスB株式は非上場です。
なお2015年にグループ企業の再編が実施され、グーグルおよびグループ企業の持株会社として、アルファベット社が設立されました。グーグルの株式はアルファベットの株式に変換され、以前のグーグルの株式のティッカーシンボルである、「GOOG」および「GOOGL」がそのまま使用されています。
フォックス・コーポレーションとニューズ・コーポレーションの種類株式
2013年、(旧)ニューズ・コーポレーションは、出版部門のニューズ・コーポレーション社と、映画・テレビ部門の21世紀フォックス社に分割されました。この際に、新しいニューズ・コーポレーションの株式は、議決権のないティッカー「NWSA」のクラスA株式と、議決権のあるティッカー「NWS」のクラスB株式に分割され、また21世紀フォックスの株式は、議決権のないティッカー「FOXA」のクラスA株式と、議決権のあるティッカー「FOX」のクラスB株式に分割されました。この際、両社の会長兼21世紀フォックスのCEOとなるルパート・マードック氏は、それぞれの議決権株式の40%近くを保有することにより、両社の支配を維持することになりました。
その後、2017年、ウォルト・ディズニーが21世紀フォックスの映像製作事業、ケーブル放送事業、映像配信サービス事業の買収を発表、そして残った事業に関しては新会社が立ち上げられ、事業を継続することとなりました。ディズニーは2019年3月に買収を完了、この2019年3月に、FOXコーポレーション社がS&P500構成銘柄(FOXAとFOX)として、21世紀フォックス社と入れ替わる形で取引を開始しました。
アンダーアーマーの種類株式
スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーは、2016年に株式分割によって、1株あたり1議決権を持つティッカー「UA」のクラスA株式と、議決権を持たないティッカー「UA.C.」のクラスC株式を発行しました。
その後ティッカーの変更により「UA.C.」は「UAA」となり、現在、アンダーアーマー株のティッカーシンボルは「UA」と「UAA」で取引されています。
ディスカバリーの種類株式
ディスカバリーチャンネルをはじめとする専門チャンネル運営のディスカバリーは、議決権の付与が異なる以下の3つの種類株式がナスダックに上場しており、そのうちティッカー「DISCA」のクラスA株式と、ティッカー「DISCK」のクラスC株式がS&P500の構成銘柄となっています。
DISCA:Discovery Inc. Class A(1株につき1議決権)
DISCB:Discovery Inc. Class B(1株につき10議決権)
DISCK:Discovery Inc. Class C(議決権無し)
議決権の種類株式については賛否両論あって、株主総会で否決されることもあります。
しかし、迅速・大胆な経営戦略の遂行によって会社が長期的に成長しやすくなるので、特にIT・ハイテクのような成長セクターでは会社と株主の両方にメリットがあり、市場ではおおむね好感されているようです。
ご参考になれば幸いです。