(1)バークシャー・ハサウェイ保有銘柄リスト(最新四半期)
(2)バークシャー・ハサウェイの損益構造(事業損益と投資損益の全体をみてみよう)
(3)バークシャー・ハサウェイ傘下の主要な事業会社
(4)バークシャー・ハサウェイの事業モデルを見える化して比較してみました
(5)バフェット氏、石油株を猛烈に買い増し
(6)バフェット探求:バフェット氏が株主価値を上げるためにとる「3つの方法」
(7)バフェット氏は、なぜHP(ヒューレット・パッカード)株を大量取得したのか?
(8)バークシャー・ハサウェイ 2022年1Qの保有株増減まとめ(FORM-13F分析)
(9)バークシャー・ハサウェイ 2022年3Qの保有株増減まとめ(FORM-13F分析)
バフェット氏、HP株に約42億ドル投資、11%を取得して筆頭株主へ
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(以下BRK)が、HP Inc(ティッカーHPQ)に約42億ドル投資(2022年4月4日~6日までの3日間で取得)、2022年4月6日時点でHP株約1億2100万株を保有し、持ち株比率は11%強でHPの筆頭株主となった、と一斉に報道されていますね。
BRKのSEC開示書類
Form-3: INITIAL STATEMENT OF BENEFICIAL OWNERSHIP OF SECURITIES
Form-4: STATEMENT OF CHANGES IN BENEFICIAL OWNERSHIP
今回の42億ドルは、BRKのForm-13F(保有銘柄リスト)の10番目くらいに位置します。
昨日のHP株は、△14.75%で引けています(クリックで拡大できます。)
バフェット氏は、なぜHP株を大量取得したのか?
ヒューレット・パッカードは2015年に、PC・プリンタ部門(HP Inc:ティッカーHPQ)と、企業向け部門(Hewlett Packard Enterprise:ティッカーHPE)を分離する会社分割を断行しました。
HPQとHPEは両方上場していますので、以降は区分して「HPQ」と表記します。
HPQは、PCとプリンタという「コモディティ」化してしまった製品を扱う会社です。バフェット氏がなぜこのHPQ株を大量取得したのかというと、報道されているところでは、割安な上に株主還元に積極的であることがバフェット氏好みの銘柄である、と解説されています。
バフェット氏の長期投資の基本は、
- 優良な銘柄を
- 割安なとき
に取得して長期保有する、というものですね。
PERは8倍台で配当利回りは3%近いので、「割安」なのはその通りですね。
HP Inc (HPQ) | Dell Technologies (DELL) | Cisco Systems (CSCO) | |
時価総額 (Bill $) | 38.6 | 37.5 | 232.0 |
予想PER | 8.35 | 7.47 | 15.11 |
オペレーティングマージン (%) | 8.9 | 4.6 | 27.3 |
予想配当利回り (%) | 2.86 | 2.71 | 2.78 |
(データ元:Yahoo Finance, 2022-04-08)
上の記事の中の株主還元利回りのデータ元は、2022年4月1日の投資雑誌バロンズの記事です。今回のバフェット氏がHPQを買い始めた3日前です。
バロンズはときどき、素晴らしくタイムリーな記事を出します。
HPQは、過去8四半期で自社株の26%を買い戻し、今年度は少なくとも40億ドルの自社株買いを株主にコミットしています。 また四半期ごとに25セントの配当を支払っており、2.8%の配当利回りを実現しています。
そもそもHPQの業績はどうなっている?
今回のバフェット氏のHPQ株取得について、ベア派から見たポイントは、HPQの業績に対する懸念ですね。
HPQは、コロナによるリモートワーク増加(→PC需要の増加)の恩恵を受けていますので、コロナ後にはその追い風が止むことが懸念されています。また、中国でのコロナ感染増加、ウクライナ危機、インフレ圧力などのマクロ要因もPC需要を弱めそうです。
それでは、こうした悪材料の中で、バフェット氏はなぜHPQ株の大量取得に踏み切ったのでしょうか?
以下は、HPQの四半期ごとの、部門別収益・税引前利益の推移です。(データ元は同社のIRサイトです。)
上の各部門の中で、「Notebooks」から「Other」までが「Personal Systems」、「Supplies」から「Consumer」までが「Printing」の事業セグメントに属します。
予想通り、PC部門よりプリンター部門の方が収益性が高いです。
プリンターは、インクなどの消耗品で儲ける「ジレットモデル型」のビジネスモデルの典型ですね。
バロンズには、HPQの業績について強気派のコメントが紹介されています(元記事)。
他のアナリストは単に弱気すぎる。現在のHPQとエンリケ・ロレスCEOは非常に優れた業績を上げている。同社ではPC需要だけでなく、オフィスプリンター、デスクトップ、その他の商用PCが成長している。同社のPC事業は、消費者市場の落ち込みにもかかわらず横ばいであり、一方でプリンティング事業は回復しており、そして同社は年間15%の株を買い戻している。
(Columbia Seligman Technology and Information Fund・Paul Wick氏)
以上、ご参考になれば幸いです。